旭光学 Super-Takumar 28mm F3.5 (M42)の修理

2018年4月頃、東湊の「南カメラ商会」にて購入。初めて訪れたところ、年末で店をたたむとのことで、せっかくなので購入した。店にはほとんど商品は残っておらず、他にはレンズ数本、カメラ10台程度といったところだった。

初期症状:

目次:

特に難しいところはなかった。


試写:


(2018/6/2)
初稿


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分解

先にカビの状況を見ておく。後群数枚にカビが発生しているように見える。



分解を始める。まずは矢印の社名リングを外す。



ちょうどいいサイズのゴムアダプターがなかったので、3mm厚のゴム板を筒状にして治具とした。ゴムを社名リングに当てて左回りで外す。このリングは固かったので、CRCを塗ってから軽く叩いて浸透させ、30分後に外れた。




社名リングを外したところ。



上から覗いて溝の奥に見えるネジx3を外すとフィルターリングが外れる。ネジには緩みドメが塗ってあった。



フィルターリングを外すと、その奥にネジx3が見える。距離リングを中ヘリコイドに固定するネジ。

先に距離を無限遠に合わせておき、動かさないようにしてネジを外す。



外したネジ。ワッシャー注意。



そのまま距離リングを引き抜いた。



ヘリコイドグリスからオイルが漏れ出してベタベタだが、拭き取る前に無限遠のヘリコイド位置をケガいておく(点線部分)。矢印は無限最短制限ネジ。

組立時はこの状態でカメラに取り付け、(2)中ヘリコイドを回して無限遠を調整すればよい。無限遠に合ったら距離リングを∞の指標に合わせて取り付ける。

ここで(A)前玉の周りを掴んで左回りに回すと前群レンズが外れる。本記事では外さずに分解を続けているが、外した方がいいだろう。



外した距離リングの内側に切り欠きがある。これが無限最短制限ネジに当たって距離リングの動きを制限している。



DOFリングのサイドにあるイモネジx3を緩める。



DOFリングが外れる。



(A)絞りリングも固定されなくなるが、丸印の無限最短制限ネジが邪魔。このネジを外す。



ここではF3.5状態で(A)絞りリングを外す。丸印の[5.6]の下辺りにクリック用の鋼球があるので紛失注意。



絞りリングを外した。鋼球を回収する。



マウント部サイドのネジx3を外す。



マウント部とレンズユニットが分離する。



マウント部とレンズユニットのリンクを確認する。

レンズ側の(A1)は絞りピンで、マウント側の(A2)切り欠きにリンクする。(O)方向で絞りが開き、(C)方向で閉じる。



マウント部外側の丸印のピンが、絞りリングに引っかかって絞りを操作する。このピンは写真の反対側にもある。



ヘリコイドの分離

ヘリコイドを分離する前に、念の為、無限遠ケガキ周辺のヘリコイドの前後の位置関係を写真記録しておく。(1)内ヘリコイド、(2)中ヘリコイド、(3)外ヘリコイド。



レンズユニットを裏返すと直進キーが2つあるので外す。これで内ヘリコイドが自由に動くようになる。



(2)中、(3)外ヘリコイドを押さえて(1)内ヘリコイドを右回りで締めていき、止まったところで終端位置を表す2本線のケガキをする(2本点線)。位置は(2)(3)の無限遠のケガキ(1本点線)に合わせる。また、無限遠から終端までの回転数を記録しておく。この場合は1回転する前に止まった。




(2)中、(3)外ヘリコイドを押さえ、今度は逆に(1)内ヘリコイドを左回りにゆっくり回して抜いていく。

抜けた瞬間をヘリコイド外れ位置としてV字にケガく(丸印)。位置は無限遠のケガキ(点線)に合わせる。



(2)中-(3)外ヘリコイドは1条ネジなので、終端位置、外れ位置のケガキは必要ない。無限位置から何回転で終端になるかだけを記録しておく。左回り(T)で締め込む。この場合は1回転強で止まった。

記録したら(2)中ヘリコイドを右回り(R)で外す。



(1)内ヘリコイド、(2)中ヘリコイド、(3)外ヘリコイドに分離した。古いグリスをベンジンと歯ブラシで清掃し、エタノールで仕上げ拭きをする。

新しいグリスを塗る。グリスはジャパンホビーツールの「光学用ヘリコイドグリス #30」を使った。



カビの清掃

レンズのカビ清掃を始める。内ヘリコイドの前玉の周りを掴んで左に回すと、前群レンズが分離する。



分離したところ。左のヘリコイド側には後群レンズが3枚残っているように見える。



前側からヘリコイド側を覗くと絞り羽根が露出している。動きはスムーズで、油汚れは見られないので分解しない。念の為、絞り込み状態を写真記録しておく。



後ろ側。



前群のうち、カビが生えていたのは一番後ろ側のレンズだった。幸い露出している部分だったので、そのままガラスクリーナーで拭き取った。すぐにカビはなくなった。



ヘリコイド側の後群にもカビがある。カニ目が3つあるが、とりあえず外側を外してみる。



外した。カニ目を回さなくても、カバー全体を掴んで回せば外れたようだ。外すと絞り機構にアクセスすると思われるネジが出てきた。関係ないので戻す。



真ん中のカニ目で後玉が外れた。カビは後玉の内側にあった。ガラスクリーナーで拭き取った。

後は距離リングを取り付ける前まで組み戻し、無限遠を調整してから最後まで組み立てれば完了。

無限遠の調整は『共通の修理方法 - レンズの無限遠調整』を参照。