共通の修理方法

様々なレンズやカメラに共通した修理方法。

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レンズの無限遠調整


レンズの無限遠調整は、無限遠に相当する遠方にカメラを向け、ピントグラスをルーペで覗いて調整するのが簡単だ。しかし、この方法は自宅から遠方が見える場合に限られる。

遠方が見られない場合は、デジタルカメラを簡易コリメーター(平行光調整器)にした調整方法が使える。かなりメジャーな方法のようで、ネットのいたるところに記事が見られる。

必要なデジタルカメラは無限遠が正確で、次の機能があるもの。

これに加え、適当なアクリル板で作成したピントグラスを用意し、ディフューズ面に細い線で格子模様を書く。この格子模様のシャープさでフォーカス調整する。

調整するレンズを取り付けるフィルムカメラは、シャッターを開きっぱなしにする必要がある。Tモードがあればよい。Bしかない場合は、外付けのセルフタイマーでレリーズボタンを押しっぱなしにできる場合があるので試してみると良い。Bもない場合は何らかの改造が必要になるだろう。



ピントグラスをフィルムレールに貼り付ける。当然ながらディフューズ面がレンズ側になる。



一般的なレンズは中ヘリコイドと距離リングがネジなどで固定されている。ネジを緩めて中ヘリコイドと距離リングの位置関係を変えることで、無限遠の調整を行う。この調整が行える状態でレンズをカメラに取り付ける。



用意したデジタルカメラとまっすぐ向い合せに置く。デジタルカメラ側は最望遠で、マニュアルフォーカスで無限遠にする。ライブビューで拡大表示にしておく。調整するレンズ側のカメラはシャッターを開きっぱなしにし、レンズは絞り開放にしておく。

調整したいレンズの距離リングを回し、ライブビューでピントグラスに書いた格子模様が最もシャープに見える位置を探る。そのシャープに見える位置が無限遠になる(お互いの光軸が平行になっている)。

その位置でヘリコイドを動かさないよう、ネジを緩めて距離リングだけを滑らせ、無限遠の指標に合わせる。そこでネジを締めて固定すれば調整完了。

一般的にこの方法で調整する場合、コリメーター側のレンズは、調整側レンズの2倍以上の焦点距離が必要とされている。しかしこれはライブビューの拡大表示ができない時代の情報で、これができる場合は同じくらいの焦点距離でも実用的には問題ないようだ。

この写真の例はSMC Takumar 35mm F3.5。このレンズは無限遠で固定用ネジが内ヘリコイドの出っ張りに隠れて見えなくなるため、無限位置でネジを締め込めない。うまいやり方が思いつかなかったので、調整時はネジを緩めたままにし、距離リングをヘリコイド側に押し付けるように回すことでしのいだ。もしかしたらもっと簡単な方法があるのかもしれない。



フォーカルプレーンシャッターの仕組み

Asahi Pentax SVを例に、フォーカルプレーンシャッターのしくみを簡単に説明する。

このタイプのシャッターは2枚の「シャッター幕」が前後に重なった状態で、それぞれ個別に左右に動くことでフィルムを設定した時間だけ露光させる。

写真上側が「先幕」、下側が「後幕」。幕状の部分はゴムでコーティングされ(ゴム引き)、光を通さない「幕」。細い部分は「リボン」という。その間にある縦長の細い金具は「幕竿」(まくざお、まくさお)といい、リボンと幕を接続し、幕の端を直線の状態に保つ役割を持つ。

Asahi Pentax SVではリボンも含めて一体の幕素材でできているが、一般的な幕では、リボンは幕とは違うリボン素材でできた別パーツになっている。リボンがワイヤーになっているものもある。



ミラーボックスを外して前から見たところ。

幕は前後に重なっており、先幕が手前側(レンズ側)、後幕が後ろ側(フィルム側)に位置する。

4本のドラムがあり、幕はそこに貼り付けられている。先幕は3と4、後幕は5と8に接着されている。1は先幕のリボン。2は後幕の幕。

左のドラム2本は巻上げレバーがある方向なので「巻上側」。右の2本はドラム内にバネが入っており、そのテンションで幕を巻き取るので「巻取側」という。



上から見た模式図を示す。番号は前の写真と一致させている。幕のドラムに巻いた部分は省略している。(7)後幕ローラー2は写真には写っていない。



幕の動作を説明する。

青い四角はフィルムの露光フレームを示す。そのすぐ前(レンズ側)に後幕、更にその前に先幕がある。

図はレリーズ状態。フレームの前には後幕の幕部分があるため、露光しない。



巻上げレバーの操作で両方の幕が左側のドラムに巻き取られる。両方の幕が同時に移動する。フレームの前には常にどちらかの幕の幕部分があるため、露光しない。

巻上げ完了時、フレームの前に先幕の幕部分が位置する。




シャッターが切られると、まず先幕が巻取側ドラムに巻き取られて一気に移動する。これを幕が「走る」という。

するとフレームの前には幕部分がなくなるため、フィルムが露光する。



先幕が走った後、設定した時間後に後幕が走る。

するとフレームの前には後幕の幕部分が位置する。これで露光が終了する。



実際には先幕が走りきった後に後幕が走るのはスロー秒時の話で、高速秒時では先幕が走り終わる前に後幕が走り出す。

フレームの前では先幕竿と後幕竿の間の細いスリットが移動することになる(緑の点線間)。このスリットがフレームの端から端まで動くことによって、フレーム全体が露光する。スリットの幅が広いほど露光時間が長くなるという仕組み。


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