Nikon GN Auto NIKKOR 45mm F2.8の修理

遺品。前玉にカビ跡のような汚れがあって取れないのと、内部のホコリが多いので清掃する。ついでにヘリコイドグリスを交換する。

例によって田口由明氏のblogに修理記事があったので、それを元に分解する。

初期症状

目次

前玉の汚れに見えたものはガラス自体が侵されており、清掃では対応できなかった。写りにはあまり影響がないようなので、このままにする。

試写

α7Ⅲ+ K&F Concept KF-NGE2

blogの試写


(2019/4/13)
初稿


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分解

カニの爪が邪魔なので外しておく。



デジタルカメラのみで使用予定なので、カニの爪は外して保管しておく。ネジだけレンズ側に取り付けておく。



田口氏のサイトによると、フィルター環をゴムアダプタで回すと前群レンズごと外れるとのことだが、固くて回らない。



とりあえず矢印の距離環を外してみる。ネジx3。ネジは接着されていたのでアセトンで緩める。



外した。



GN爪を上にスライドして外す。裏に鋼球があるので飛ばさないよう注意。



外した。丸印は鋼球がかかる窪み。鋼球は外した爪の裏側にくっついていた。


GN爪を裏返したところ。爪の裏、中央の穴には、奥側から順に「バネ」「台座」「鋼球」が入っていた。



やはりフィルター環が外れない。とりあえず前玉の押さえ環と思われるリングを外してみる。



外してみると、押さえ環ではなく飾り環だった。



横から覗くとネジ山に穴が空いている。ここにアセトンを注入して少し待ってみる。



するとフィルター環が回り、外れた。

情報とは違い、外れたのはフィルター環だけで、レンズは外れない。参考記事とはバージョンが違うらしい。



次にマウント側から外していく。

マウント環を外す。ネジx5。ネジはすべて接着されているのでアセトンで緩める。



外した。



マウント環を裏返した。絞り込みレバー(丸印同士)がリンクしていた。

マウント環側のレバーは常に絞り込む方向に力がかかっているので、組立時は鏡胴側も絞り込み側にして組み込む。



次に(A)絞り環を外す。

先にリンク箇所を確認しておく。絞り環から出ている長いネジが、丸印で鏡胴の(B)絞り操作金具にリンクしている。これによって絞り環の動きで絞りを操作している。



絞り環はそのまま後ろ側に抜ける。クリック感は鋼球ではなく板バネなので気をつけなくてよい。



外した。



指標環を外す。ネジx4。指標「●」がちょうど絞り環のクリック感板バネ(A)のところに来ると覚えておく。



外した。



次に前側から鏡胴を外す。ネジx3。接着されているのでアセトンで緩める。



そのまま前に鏡胴を抜こうとしても、いろんな箇所が引っかかって外れにくい。写真のようにマウント側から引っかかり箇所を確認し、鏡胴を回して角度を変えながら抜く。特に矢印の絞り操作金具は引っかかりやすいので、引っかからない位置に動かして避ける。



外した。



前玉は押さえリングを回して外すと取り出せる。前側に凸。

前玉のカビ跡だと思っていたものは、ルーペで観察するとガラス表面が泡立ったようになっていた。清掃では対処できない。前玉なので影響は少ないだろう。



後玉はキャップを掴んで回して外せば取り出せる。貼り合わせレンズで、後ろに凸。

内部のホコリを清掃する。中玉は鏡胴を分解しないと取り出せないようだ。取り出さなくても前後から清掃できたので、鏡胴は分解しなかった。



ヘリコイドの分解

グリス交換のため、ヘリコイドを分離していく。

(A)は直進キー。反対側にもある。内ヘリコイドに固定されていると思われる。直進キーは(3)外ヘリコイドの直進溝に沿って前後に動く。

まず無限位置を記録する。

(2)中ヘリコイドを右回りで締め込んで無限遠にする。無限位置で板バネと直進キー溝に合わせて(2)をケガく。

後でわかったが、このレンズはヘリコイドが1条ネジなのでケガキは不要だった。



最短側の位置を確認しておく。左に90度くらい回すと最短になる。(A)が(2)に当たる位置に窪みがあることを確認しておく。



写真は前から見たところ。金色の筒が(1)内ヘリコイド。直進溝は(2)と(1)の間の(4)銀色のリングにも切られている(丸印)。



直進キーx2を外す。




(2)中ヘリコイドが無限を超えて回るようになる。(2)を止まるまで右に回す。半回転直前で止まった。

止まった位置で(2)の無限ケガキに合わせ、(3)に終端を示す2本線のケガキを入れる。

1条ネジなのでこのケガキも必要なかった。



ここで筒の内側から(1)内ヘリコイドが引き抜けることに気づいた。ネジ山が切られていない「内ー外」筒同士が滑る方式だった(田口氏の用語では「滑空ヘリコイド」)。

(3)外ヘリコイドには内側に(4)筒が固定されており、それが(1)内ヘリコイドと滑っている。



(2)を左に回して慎重に抜いていく。

1条ネジなので普通に抜いてよかった。



11回転半ほどで外れた。外してみて1条ネジだと分かった。外れ位置の記録は不要。



外したところ。(1)内ヘリコイド。(2)中ヘリコイド。(3)外ヘリコイド。



中ヘリコイドのネジ山部分には直進キーの溝が切られていた。この溝によって内ヘリコイドに固定された直進キーが押され、内ヘリコイドが前後してフォーカシングする。ズーム機構に似ている。



(3)と内側の筒(4)は外せなかった。(3)のネジ山は(4)との隙間にあるので直接洗浄できない。(3)全体をベンジンに漬け込み、ストロー洗浄用の細いブラシで古いグリスを落とした。

あとは新しいグリスを塗って組み立てれば完了。ジャパンホビーツールの#10を使用した。

フォーカス調整要素のないシンプルな構成だった。


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