OLYMPUS OM E.ZUIKO 200mm F4の修理

遺品。社名環には「OLYMPUS M-SYSTEM E.ZUIKO AUTO-T  1:4 f=200mm」とある。

初期症状

目次

望遠レンズの分解は初めてで、前筒が分離することに気づくのに時間がかかった。全体としてはシンプルな構造だった。リングやネジがいちいち接着されているのには閉口した。

試写

α7Ⅲ + K&F Concept KF-OME


(2019/2/3)
初稿


一階層上へ



分解

初期位置を無限遠、F4で分解していく。

最初に組み込みフードを外しておく。(1)ローレット環を持って(2)フードを回すと外れる。(1)は前筒に残る。



フードを外すと現れるセットネジをx3を緩める。



(B)の部分を掴んで回すと前群が分離する。しかし固くて回らなかった。

エタノールを継ぎ目に入れ、しばらくプラハンマーで叩き続けたが効果なし。

(A)セットネジを外してネジ穴からアセトンを流し込み、数分待つと回った。接着されていたようだ。



前群を外したところ。

この個体は前玉にカビがある。社名環を回して外し、前玉を取り出して食器用洗剤で洗うと概ね綺麗になった。コーティングがやられているのか、カビ跡が少し残ったが、許容範囲。



内部は絞りユニットが見えているが外す取っ掛かりがない。後ろから分解してみる。



マウント側から矢印の黒い遮光環外す。



次に矢印のマウント環を外す。ここも固かったが、アセトンを流し込むと外れた。やはり接着されていた。



マウント環を外した。



マウント環裏側の(1)絞り込み伝達レバーが噛み合う位置は、



丸印の位置。写真の(2)絞り込み伝達コロの左側。(2)が右に動くと絞り込み。



矢印の黒い絞り伝達押さえ環を外す。



2つの(3)絞り伝達プレートの爪を内側に避けて外す。すると(4)絞り伝達環が外れる。

(4)は(3)によって絞り環と連動しており、写真は開放位置。絞ると後ろから見て右に回る。




後群を分離する。手で掴んで回す。




後群を分離した。



筒の中を覗き込んで、ネジx3を外すと前筒が分離する。

最初、このネジは絞りユニットの固定だと思い込み、このネジで筒が分離すると気づくのに時間がかかってしまった。



分離した。写真ではヘリコイド筒(写真左)と前筒(写真右)は後ろを向いている。ここで前筒からフードのローレット環が外せる。

前筒の絞りユニットから(5)絞り伝達レバー、(6)絞り込み伝達レバーが出ている。(6)は(7)絞り込み伝達部品の前側に噛み合う部分がある。組立時は(7b)を矢印方向に避けておく。



ヘリコイド筒を前から見た写真。

前写真の(5)絞り伝達レバーが入るのは(8)のフォークに挟まれる部分。(6)絞り込み伝達レバーが入るのは(7a)の右側の丸印の部分。(7a)は前写真の(7)の一部で。(7b)を動かすと(7a)も動く。



念の為、絞り羽根の重なりを記録しておく。前。



後ろ。



(7)絞り込み伝達部品を外す。



(7)を外したところ。(7b)でマウント側から絞り込み情報を受け取り、(7a)で絞りユニットに伝える。



絞り指標環を外す。この下の3ヶ所に鋼球とバネがあるので、上から押さえながら慎重に外す。絞り開放の場合は矢印の位置あたりにある。




矢印の3ヶ所にあるバネと鋼球を回収する。

次に2ヶ所の(3)絞り伝達プレート、(8)絞り伝達金具を外す。すると(9)絞り環が外れる。



絞り環を外した。


ヘリコイドグリス交換

距離環の滑り止めゴムを剥がす。軽く接着されているので、隙間から薄いヘラなどを差し込んで剥がす。前後どちらからでも抜ける。



剥がしたら古い接着剤を清掃する。組立時はエタノールで剥がれる接着剤で薄く接着する。

次に距離環を無限遠状態にしておき、そのままヘリコイドを動かさないようにしながら セットネジx4を緩めて距離環を外す。



距離環を抜いたら無限遠の状態を記録するため、(A)内、(B)中、(C)外の各ヘリコイドに無限遠のケガキをする。

組み立ての際はこのケガキで無限遠を合わせてから距離環を取り付ける。



ネジ各2で直進キー2つを外す。これらはキーもネジも違う形なので注意。(1)は皿ネジ。



(A)内、(B)中、(C)外、各ヘリコイドを分離していく。

まず(B)と(C)の終端までの回転数を記録する。(A)が(C)に干渉しないよう、 事前に少しだけ(A)を右に回して緩めておく。

次に(B)を(C)に対して右に回して締めこんで行き、止まるまでの回転数を記録する。この場合は1回転する少し前に止まった。

なお、ここは一条ネジなので終端位置や外れ位置の記録は必要ない。

記録したら(B)を(C)に対して左に回していき、分離する。この場合は5回転半ほどで抜けた。



次に(A)を(B)に対して左に回して締めこんでいく。 止まった位置で(B)の無限遠のケガキに合わせ、(A)に終端を示す二本線のケガキをする。

この場合は1回転するまでもなくすぐに止まった。

組み込みの際はこの終端位置が合うかどうかを確認する。

次に(A)を右にゆっくり回して抜いていく。



外れた瞬間、(B)の無限位置のケガきに合わせて、(A)に外れ位置を示すV字のケガキをする。

組立時はこの位置からヘリコイドを入れる。



歯ブラシやスポンジなどを使い、ベンジンで古いグリスを落とす。新しいグリスを塗って組み立てれば完了。

今回はジャパンホビーツールの#10を使った。

組立時に無限遠が合っていない場合は、『共通の修理方法 - レンズの無限遠調整』で調整する。


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