OLYMPUS OM G.ZUIKO 50mm F1.4の修理

遺品。社名環には「OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm」とある。

初期症状

田口由明氏の『修理人たぐちの徒然日記 - OM-SYSTEM G.ZUIKO 50/1.4 編』を参考にした。かなり詳しく解説されているので、自分で探るような部分はなかった。本記事の内容もこのサイトとほとんど同じになってしまったが、なにとぞご容赦願いたい。

目次

試写

α7Ⅲ + K&F Concept KF-OME

blogの試写


(2019/2/3)
初稿


一階層上へ


分解

初期位置を無限遠、F1.4で分解していく。(1)社名環をゴムアダプタで回して外す。



(2)絞り指標環がそのまま外れる。



(3)銀色の絞りクリック環を外すが、下側に鋼球があるので注意。F1.4なら丸印辺り。



外した。丸印の鋼球を回収しておく。



(3)絞りクリック環の裏側。組立時はここのグリスを入れ替えておく。この個体はグリスが残っていなかった。



(4)絞り環がそのまま外れる。



外したところ。



(4)絞り環の裏側の丸印の部分と、



(5)のフォーク部分が噛み合う。ここはグリスが軽く塗ってあった。写真は開放で、矢印方向で絞る。



次に前群を外す。カニ目を回すと外れる。



外した。前群にカビはなかった。



念の為絞り込み状態を記録しておく。前。



後ろ。



次に後ろ側から分解する。(6)遮光環を外す。



マウント環を外す。張り付いていて外れにくかった。



外した。



マウント環の裏側。(8)絞り込み伝達爪はレンズ内の絞りユニットに絞り込みを伝える役割。



(9)が絞りユニットの一部で、(8)絞り込み伝達爪は丸印の位置に来る。(9)は矢印方向で絞り込み。



(10)銀色のリングを外す。ネジx3を外すが、ネジの形状が違う点に注意。(A)(B)は皿ネジ。



(11)絞り操作環を外す。



外した。



(11)絞り操作環の裏側の丸印の部分は、



絞りユニット側の(12a)絞りレバーと噛み合う。このレバーで絞りを操作する。写真は開放。矢印方向で絞り込み。



次に後群を回して外す。根本の筒自体を掴んで回すこと。(A)の部分は後玉押さえ環なので、ここを回すと後玉だけが外れてしまう。

この筒の奥にあるカニ目を回すと、後群と中群が一体になって外れる。このカニ目にアクセスできる工具がある場合はその方がいいだろう。



外した。後群は綺麗で、カビは中群にあった。幸い、今露出している面だったので、ここで清掃できた。



再び前から分解する。

(12)の絞りカムを外したい。(12)は(A)絞り操作ピンを動かすカムになっている。

なお、組立時はそのままだと(12)が(A)を踏んでしまうので、(A)を矢印方向に避けながら組み立てる。

まず、(5)の部品が引っかかっているので外す。これは絞り環と噛み合っていた部品。



そのまま外そうとしても、後ろ側の(12a)絞りレバーが引っかかって抜けない。

(A)の位置に切り欠きがあるので、(12)絞りカムを少し絞った位置にして、(12a)を(A)の位置まで移動すれば外せる。



外した。



絞りユニットを分離するが、内壁にバネがかかっている部分がある。丸印のバネを外しておく。



後ろ側からネジx3を外すと絞りユニットが下に落ちる。



絞りユニットにある丸印のスペーサー3つは外れやすいので注意。別に保管しておいてもいいだろう。



スペーサーは裏表があり、写真のように取り付けられている。



後群を外した際に中群を残していた場合は、前からカニ目リングを外すと中群レンズが外れる。この場合は中群レンズの台座が残る。後群と一緒に中群を外していた場合は、台座も一緒に外れている。



外した。中群は前に凹、後ろに凸。


ヘリコイドグリス交換


距離環の滑り止めゴムを剥がす。数カ所で軽く接着されているので、隙間から薄いヘラを差し込んで剥がす。



剥がした。古い接着剤を清掃する。組立時はエタノールで剥がれる接着剤で薄く接着する。



次に距離リングを外す。

念のため、外す前に無限状態の位置を記録しておく。∞の表示がちょうどマウント側の直進キー左のネジ穴の位置に来ると覚えておく。



無限遠からヘリコイドを動かさないよう、慎重に距離リングを外す。サイドにあるセットネジx4を緩めると外れる。



外した。



無限位置を記録するため、(A)内、(B)中、(C)外の各ヘリコイドをケガいておく。



後ろ側の2つの直進キーを外す。(1)と(2)はキーもネジも違う形状で、(2)は皿ネジ。



外した。



(A)内、(B)中、(C)外、各ヘリコイドを分離していく。

まずは(B)と(C)の終端までの回転数を記録するが、事前に(A)が(C)に干渉しないよう、(A)を少し右に回して緩めておく。

次に(B)を(C)に対して右に回して締め込んでいき、止まるまでの回転数を記録する。この場合は1回転する前に止まった。なお、(B)と(C)は1条ネジなので終端や外れ位置の記録は不要。



次に(B)を(C)に対して左に回して外す。ちょうど6回転ほどで外れた。



写真の外ヘリコイドは外れているものと思ってほしい。

次に(A)を(B)に対して左に回して締め込んでいく。止まった位置で(B)の無限位置のケガキに合わせ、(A)に終端を意味する2本線のケガキをする。

組立時は(C)を止まるまで締め込み、このケガキが合うことを確認する。



(A)を右にゆっくり回して外していく。1回転する前に外れる。

外れた瞬間の位置を、(B)の無限位置のケガキに合わせ、(A)に外れ位置を意味するV字のケガキをする。

組立時はこの位置からヘリコイドを入れる。



ヘリコイドが分離できた。

ベンジンで清掃し、新しいグリスを塗る。最初は自分で粘度調整したシリコングリスを使用した。これはジャパンホビーツールの#30より軽く作ってあるが、ヘリコイドの感触が少し重い。

#10を塗ると今度は若干軽くなった。

そこで#30と#10を等量混合して仮に#20のグリスを作成して塗ったところ、ちょうど良い感触になった。

組立時に無限遠が合っていない場合は、『共通の修理方法 - レンズの無限遠調整』で調整する。


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