OLYMPUS OM ZUIKO 75-150mm F4の修理

遺品。社名環には「OLYMPUS M-SYSTEM ZUIKO AUTO-ZOOM 1:4 f=75~150mm」とある。

初期症状

目次

ズームレンズを分解するのは初めてで、ヘリコイドとは違うレンズの移動方法を知った。

修理の結果、ヘリコイドはスームズに、レンズは綺麗になった。しかし途中で分解方法が分からなくなり、完全なオーバーホールには至らなかった。

試写

α7Ⅲ + K&F Concept KF-OME


(2019/2/3)
初稿


一階層上へ


分解

組み込みフードを外す。(1)ローレットリングを掴み、フードを回して外す。



フードを外すと(3)銀色のリングが出てくる。これを少しずらすとセットネジが現れる。



セットネジx4を緩めると前群レンズを回して外せる。この個体は極端に緩く、締め込みまで数回転分の余裕があった。

後で分かったが、このレンズは前群のねじ込み具合で無限遠を微調整するらしい。

無限遠を調整して組み立てた後は、無限位置から右に1回転する前に終端となり、無限位置から左に5回転弱で外れるようになった。



(4)前群を外すと(3)銀のリングと(1)ローレットリングも外せる。



ズームで前後する中群が見えた。レンズを個別に外すカニ目はあるが、中群全体を外す場所が分からない。



ズームレンズは初めてなので勝手がわからない。とりあえず距離環の滑り止めゴムを剥がしてみる。接着されているので、隙間から薄いヘラを差し込んで剥がす。

この個体はしっかり接着されていた。



剥がした。組立時はエタノールで剥がれる接着剤を薄くつける。

(5)前ヘリコイドと(6)距離環とを固定する(A)ネジx3と、(B)制限ネジが現れる。見た目からすると、このレンズはシングルヘリコイド仕様のようだ。

(A)のネジ穴は(L)左、(C)中、(R)右の3つある。この個体はネジが(L)に取り付けられ、(C)と(R)は使われていなかった。

後で分かったが、この3つの穴で無限遠の大まかな調整をするようだ。通常は(C)を使うべきで、この個体も結局は(C)を使うように変更した。



(5)前ヘリコイドを外すが、その前に(6)距離環を無限遠にし、(6)の∞マークに合わせて(5)に白ペンで無限遠のマーキングをする(1本線)。白ペンなのは組立後に見える位置のため。

(A)固定ネジx3を外すと(5)が自由に回るようになる。

(5)を右に回して締め込み、止まったところで(6)の∞マークに合わせて2本線で終端位置のマーキングをする。この場合は無限位置からすぐに止まった。



(5)を左にゆっくり回して抜いていく。1回転する前に外れる。

抜けた瞬間を(6)の∞マークに合わせ、組立後に見えない位置にV字でケガく。



ヘリコイドの古いグリスをベンジンで拭き取り、新しいグリスを入れた。

最初はジャパンホビーツールの#30を使用したが、シングルヘリコイドのため感触が軽い。後に「#30=1g、#3000=0.4g」を混合したものに変更したところ、ちょうどよい重さになった。

次に(B)制限ネジを外すと(6)距離環が外れる。



外した。(5)の白ペンでのマーキングは清掃で消えるので、ケガキで転記しておく。組立後に見えなくなる位置を選ぶ。



編集の都合上、ここで部品番号に一貫性がなくなる。

ズーム機構を見ておく。ズーム機構は前側と後側の2つあり、それぞれ前側の中群(「中群F」とする)と後ろ側の中群(「中群B」とする)が別々に前後移動する。

写真は前側のズーム機構。「ズームF」とする。ズームがほぼ最短75mm近くの位置。

中群Fに固定された(2)ズーム支点ネジが、(1)縦レールと(3)斜めレールに沿って動く。写真では(4)ズーム指標環に隠れて見えないが、(1)は縦長の直線、(3)は左下に向かっている斜めの直線。

望遠、広角とズームすると、(1)が左、右に移動する。すると(2)が中群Fを伴い、(3)に沿って望遠側で後ろ、広角側で前に動く。



(2)ズーム支点の拡大。

広角から望遠側にズームすると、(2)の周りにあるコロ(2A)が左に回転する。その後ろにあるワッシャーのような(2B)は右に回転する。




丸印のネジx3を外すと(4)指標環が外れる。(4)はそのままでは引っかかるが、少し回すと外れる位置がある。



外した。



指標環はズームの制限にもなっている。



指標環の制限部分が、(A)と(B)に引っかからない場所が指標環が外れる位置。(A)は2ヶ所で、写真反対側にもある。

(B)は後でズーム環を外すときに邪魔になるので、ここで外しておく。




「ズームF」の反対側に、「中群B」を動かすもう一つのズーム機構がある。「ズームB」とする。

(5)縦レールは短いだけでズームFと同じ。

ズームFでは斜めレールは直線だったが、こちらは(6)のようにU字になっている。そのため広角から望遠側にズームするとき、最初は中群Bが後ろ側に移動していくが、110mm辺りから前側に移動する。



(7)ズーム縦レール環を外すため、ズームFの(2)支点ネジを外す。



外したネジとワッシャー。しっかりとグリスが塗られている。



本体側に段ワッシャーが残る。裏側にも段があり、裏表で微妙に段の高さが違う。この個体は表側の段が高いが、逆にしても問題ないようだ。



ズームBの支点ネジも外す。



ネジとワッシャーはズームFと同じものに見える。



段ワッシャーが残る点も同じ。



ズーム縦レール環が引き抜ける。段ワッシャーx2を回収しておく。



レールの隙間を利用し、中群Fを後ろから前に押して抜くことができる。



抜いた。



ズームB側。U字レールが見える。更に内部にも筒があり、そこにもU字レールがある。

矢印の板バネが(8)ズーム支点を後ろから押している。

次に(9)ズーム環の滑り止めゴムを剥がす。接着されているので隙間から薄いヘラを差し込んで剥がす。



剥がした。組立時はエタノールで剥がれる接着剤を薄くつける。



ズーム環の穴から見えるネジx4を外すとズーム環が外れる。



次にネジx3を外すと(10)絞り指標環が外れる。



外した。



次に後ろ側から(11)遮光環を外す。



(12)マウント環を外す。



マウント環裏側にある矢印のコロは、



(13)絞り込み伝達レバーと丸の位置で噛み合う。



(14)絞りレバー、(15)絞り伝達レバーを外すと、(16)絞り環が前側に外れる。

矢印の裏側に鋼球があるので、(16)を押さえながら慎重に外す。



写真は前側を上にして絞り環を抜いている。鋼球とその下にあるバネを回収する。



中群Bを抜き忘れていた。矢印のズーム支柱を外すと中群Bが抜ける。筒の前側から手を入れ、前群Bの筒の内側を押さえて引っ張ると抜けやすい。



汚れているのはこのレンズだった。取り出すとレンズが油まみれになっていた。グリスから染み出したのだろう。

この後は分解する取っ掛かりが見当たらなかった。後群を掴んで回せば外れるだろうと思っていたが、なにをやっても回る様子がない。

ズームBのグリスが入れ替えられないが、後群は綺麗なので、ここで分解を断念した。



無限遠調整

このレンズの無限遠調整は、まずは(5)前ヘリコイドと(6)距離環の取り付け位置で大まかに調整する。

この調整は距離環に(L)(C)(R)の3つのネジ穴があり、どのネジ穴で(5)と(6)を固定するかで決まる。通常は(C)を使用する。

次に前群レンズを一旦締め込み、そこからねじ込みを緩めて無限遠を微調整する。

前群のねじ込み具合で無限遠が調整しきれない場合は、距離環のネジ穴の位置を変更する。極端なオーバーインフの場合は(R)を、無限遠に足りないときは(L)を使用すればよい。

元々この個体の無限遠は合っていたが、ネジの位置は(L)が使用されており、前群が何回転も緩められていた。(C)に変更すると前群を少し緩めるだけで調整できた。

なお、ズームするとフォーカスがずれる。150mm側の方が、75mm側よりヘリコイドを遠距離にする必要がある。そのため、無限遠は150mm側で合わせる。75mm側で無限遠を合わせてしまうと、望遠側にズームした際に無限遠が出なくなってしまう。


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