Olympus Pen F Zuiko Auto-Zoom 50~90mmF3.5の修理

遺品。

初期症状

ズームレール筒が分離できなかったが、修理の結果は良好。OM 75-150mmF4とよく似た構造で、ズーム機構の関係上、レンズにヘリコイドグリスの油が回るのは避けられないようだ。

試写

未試写

(2021/00/00)
初稿


戻る

分解


初期状態は無限遠、最短50mm、最小絞りとする。

ゴムアダプタで社名環を回して外す。



前玉が外れる。





距離環を近距離側に少し繰り出すと、前玉の鏡胴が単ヘリコイドになっているのがわかる。



次は、とりあえず距離環のセットネジ×4を外してみる。下の大きいネジは制限ネジ。

位置関係を記録するため、セットネジを1つ外したら、ネジ穴から赤マーカーを突っ込んで色を付けておく。

セットネジをすべて外すと距離環とヘリコイドの固定が外れたが、距離環は後ろ側に抜ける仕様で、外せなかった。一旦セットネジを戻す。



マウント側から分解していく。マウント環を外す。ネジ×3。





ネジ×3を外すと、絞り伝達ユニットと後群レンズが外れる。



丸印で絞りが伝達されていた。



絞り伝達ユニットを裏返した。丸印が先ほどとのリンク箇所。



後群レンズは鏡胴にねじ込まれ、丸印のセットネジで固定されている。位置を調整できるようだが、よく分からないので動かさないように気を付ける。



後ろ側から絞りの形状を確認しておく。少し油で汚れている。

次に絞り環がそのまま外れる。



丸印はリンク位置。



丸印がリンク位置。TTL番号側と絞り値側の2カ所。

矢印に鋼球がくっついていた。保管しておく。



絞り環がグリスまみれなので分解する。側面のネジ×2。

鋼球が乗っていた矢印あたりの下に小さいバネがある。回収しておく。



バネ×6を回収する。左側の部品は更に2つに分離する。



ベンジンで全体の油を拭き取ってから組み立てておく。



次に矢印の絞りクリック環を外す。側面のネジ×2。引っかかるが少しずつ引き上げると外れる。外す際、最後は矢印の切り欠きを利用すると外しやすい。



そのままズーム環が外れる。





丸印はリンク位置。組み立て時は矢印で示した2カ所の出っ張った部分の内周にグリスを塗る。



丸印はリンク位置。これでズームを操作する。



これで距離環が外せる。セットネジ×4。下側の大きな制限ネジ×1も外す。

ヘリコイドを無限遠から動かさないように距離環を後ろ側に抜く。





先ほどネジ穴から赤く塗った場所。



距離環の制限。



ヘリコイドを分離していく。

その前に無限位置を記録するため、指標位置に合わせて罫書く。



終端位置を確認する。前ヘリコイドを右回りに締め込み、止まった場所で終端を表す2本線で罫書く。組み立て時はこの位置を確認する。

そのままゆっくり左に回してヘリコイドを外していく。



半回転ほどで外れた。

外れた瞬間の位置でV字に罫書く。組み立て時はこの位置からヘリコイドを入れる。





前筒と前ヘリコイドはセットネジで固定されている。フォーカス調整用か。無限遠は合っているのでここは動かさずにそのままベンジンで洗浄する。セットネジのネジ穴は3つあるが、1つしかネジが入っていなかった。

新しいグリスはジャパンホビーツールの#30を1g、#3000を0.4gを混合したものを使用した。他の部分もすべてこのグリスを塗った。

#3000のグリスはレンズに付くと取れにくいので注意。エタノールやベンジンで拭いたくらいでは無理。食器用洗剤で丸洗いし、流水で洗い流す必要がある。



指標環を外す。A:ズーム伝達ネジと、Bのネジ×3を外す。



ズーム筒が露出した。ズームレール全体が見えるようになった。



次に絞りユニットを分離していく。絞り伝達部品を外す。ネジ×2。



すると絞りカムの上側の筒が抜ける。






リンク箇所。



丸印がリンク箇所。

これで絞りカムがそのまま抜ける。



絞りユニットを外す。ネジ×3。



絞りユニットは予想より油で汚れており、動きが悪い。後で洗浄する。

最後に円盤が外れる。役割はわからない。





ズーム機構の分解

ズームレンズを分離していく。ズームピン(ネジ)を外す。



外したネジにスペーサーが付いてきた。更にもう一つ、大きめのスペーサーが残っているので回収しておく。



ネジ穴から細いドライバーを突っ込んで上に押すと、上からズームレンズが出てくる。

ズームレンズ群は前側と後ろ側の2群ある。この前側は「ズームF」とする。



ズームFを掴んで引き抜く。



組み立て時、ズームFの側面の銀色の部分にのみグリスを塗る。



鏡胴の奥に後ろ側のズームレンズ群がある「ズームB」とする。



ズームレールの右下にある、ズームBに関係する固定ピン(ネジ)を外す。



ズームを遠距離側すると、穴の奥に先ほどは見えなかったネジの頭が見える。ネジ×3を外す。

ここではネジAと板バネ、ネジB(制限ネジ)も外したが、本来はズームBを分離してから外すもののようだ。



ズームBが分離する。



鏡胴の奥には何もなく、これ以上は分解できないようだ。

丸印の位置にカニ目があるが、接着されていて回らない。溶剤(アセトン、ベンジン、エタノール)、ヒートガンを試したが効果がなかった。

分解できないが、ズーム筒と鏡胴の間のグリスも交換したい。「ベンジンを流し込んではズーム筒を回しながら拭き取る」というのを繰り返し、全体を清掃した。

グリスを塗るときは、ズーム筒を回しながら、ズームレールの穴に筆を入れてグリスを塗った。



ズームBが更に分離する。



ズーム筒で外したピンはこの部品に取り付けられていた。



ズームBのズーム機構。ズーム操作に合わせてレンズが前後に動く。

ピンを外すとレンズが分離する。



薄曇りなのはこのレンズだった。ズーム機構の関係上、レンズの近くにグリスが塗られているため、レンズ自体に油が回るようだ。

押さえリングを回してレンズを外す。



このレンズは両面とも平面に近く、表裏がわかりにくい。張り合わせレンズで、押さえリング側の方が分厚い。また、押さえリングの反対側の方が凸が強い。この2点で見分けるとよい。

このレンズは周辺に少しバルサム切れがある。軽微なのでそのままにしておく。

構造上、レンズに油が回ってしまうのは避けられないので、グリスは最小限の薄塗りにとどめる。


絞りユニットの洗浄

絞りユニットを分解する。後ろ側から絞り込み状態を確認する。



前側も確認しておく。



絞り開放にして分解する。ネジ×3。



羽根が露出した。羽根を取り外す。

右側の部品は更に2つに分離する。





A:羽根操作環も汚れているので更に分解する。ネジ×5。



すべての部品が外れた。汚れをベンジンで拭き取る。

念のため、部品を小瓶に入れてベンジンに浸し、超音波洗浄機にかける。時間が長いとベンジンが発火するので十分注意する。

洗浄しても羽根操作環の動きが悪い。動かすたびに「キッ」という金属がこすれる音がする。「鍵穴のクスリ」を塗るとスムーズに動くようになった。

絞り環を操作すると羽根がわずかに閉じてしまう不具合は、この羽根操作環のレバー部分を少し曲げることで解決した。



羽根の組み立ては、まずどこでもよいので1枚目を置き、左回りに2枚目以降を乗せていく。そのまま最後の1枚の前まで羽根を置く。



最後の1枚は絞り気味にして組み込む。

最後の1枚の先端は、1つ前の羽根の上側に。根元は最初の1枚の下側に潜り込ませる。手袋をした指で最初の1枚を押さえながら組み込むとよい。





最後の1枚を組み立てたら、あとは逆順に組み立てれば完了。


最初に戻る