Zett-Projektion Zett 150の修理

遺品。正体不明の箱のまま放置していたが、触っているうちにカバーが左右に開くことに気づき、調べると小型プロジェクターだと判明した。

銘板には「Zett-Projektion」としか書かれておらず、型番が分からない。ネットで調べたところ「Zett 150」とほぼ同じもののようだ。しかし形状に若干の違いがある。更に調べたところ、「BABY-ZETT」という機種の画像と一致した。しかしこの機種は情報がなく、詳細はわからない。おそらく「Zett 150」のバージョン違いの製品だろう。ここでは「Zett 150」としておく。

電源ケーブルはなくなっており、本体の電源接続端子は特殊でそのままでは利用できない。電球もバヨネット式の変わったもので代替部品がない。

初期症状:

目次:

最終的にオリジナルから改変し、LED化することとなった。オリジナルの部品は加工しておらず、元に戻せるようにしてある。LED光源での鑑賞に問題はなく、満足できる結果となった。


試写:

(2018/12/25)
初稿


一階層上へ



事前調査

使い方もよくわからないので、まずは全体を調べてみる。

底部に左右に動くレバーがある。後方に電線のようなものが見える。



かなり古い電線で、布製の被覆が破れてむき出しになっている。



正面の突起を左右に動かすと箱が開く。中からレンズがでてくる。

レンズは「VOGITLÄNDER PROJEKTOS 1:2,5 f=80mm」。



銘板は「Zett-Projektion BRAUNSCHWEIG MADE IN GERMANY」。「Zett-Projektion」というドイツ社製のプロジェクターだった。

ネットで調べたところ、「Zett 150」という機種とほぼ同じもののようだ。違うのは放熱スリットの数が少ないことと、ランプ室上部が開口していないこと。それにこの銘板に機種名が書かれていないこと。

更に調べると「BABY-ZETT」という機種と一致した。しかしこの機種は情報がなく、詳細がわからなかった。



力を入れてレンズ部を押し下げると、金属同士の擦れる音とともにカバーからボディが出てきた。

本来はもっとスムーズに出てくると思われる。

丸印のところにスライドアタッチメントを取り付けて投影するようだ。



アタッチメントを取り付けた状態。



収納時、アタッチメントも一緒にカバー内に収まる。レンズに当たりそうで恐い。



この状態になると底部のレバーが動かせるようになる。

丸印台座の内部に電球が入っており、台座ごと左右に動いて電球の位置を大きく調整できる。

超小型のプロジェクターなので、スライド全面を均一に照らせないのだろう。



この状態で台座を前側にスライドすると、台座とレバーごと電球を取り出せる。



取り出した。細長い電球。



電球は昔の規格なのか、2点バヨネット式。少し左に捻じれば外れる。



刻印は「KONDO ELECTRICAL INDUSTRIAL CO., LTD MADE IN JAPAN」。

フラッシュで有名なKONDO製。



裏に「100V-100W」とあるので、日本向けの電球に交換されたのだろう。

その下には「+」のような黒字の書き込み。極性はないと思うので意味はわからない。



電源ケーブルの接続端子は見たことがないもの。ドイツの古い規格だろうか。

電源ケーブル自体は残っていなかった。



底部から見ると、左右のカバーは内部の2ヶ所で(1)金具、(2)バネで固定されている。

ボディは(3)レールに乗って前後する。レールの後ろ側は丸印でカバーに引っ掛けられている。

この引っ掛かりはレールかカバーを90度回さないと外れないようになっている。

(1)(2)を外せばカバーの後部は分離しそうだが、カバーは前部がボディの台座とカシメられているので回せない。

レールはボディ台座から引き抜けないので回せない。

そのため、レールとカバーの引っ掛かりは外せないと思われる。



方向が変わって写真の右が前側。

(4)レールが(5)ボディ台座の(5a)レールガイドに入っている。

これにより、カバーを開くと(6)アームが(5)ボディ台座を前側に引っ張って移動させる。

更に(7)ボディの集光レンズユニットは(5)ボディ台座に対して前後に移動できる。

これはレンズを引き出すと(7)が前に、レンズを収納すると後ろに移動するようになっている。

写真はレンズを引き出す前。



レンズを少し引き出したところ。



(7)集光レンズユニットの(5)ボディ台座に対する移動は、レンズを動かす際にレンズのアームの一部(8a)が(5)台座の一部(5b)(5c)を押すことでなされる。

レンズはアームが(8x)で(7)に固定され、(8x)を中心に回転する。

(8a)が(5b)を押せば(7)が前に、(5c)を押せば後ろに動く。



分解

電球ソケットがボディと電線でつながっている。まずはここを外したい。

台座のネジ2つ外す。硬いのでCRCをつけてしばらく待ったが外れない。



ネジの反対側からもCRCを付けたら5分程でネジが回った。

金具やスペーサーが落ちるので押さえながら外す。



台座とレバーが分離し、電球ソケットが外れた。



裏返した。上向き。

部品配置下側から(A)電球ソケット台座。(B)ソケット押さえ金具。(C)スペーサー。(D)電球移動レバー。

電球は(D)の一部(Da)が左右に押して動かす。



電球ソケットの裏側。緑っぽい円形のものは絶縁用のベークライトのようだ。

丸印は電球移動レバー先端の突起がはまる部分。



絶縁体を外すと電極が露出する。

金色の爪を矢印方向に避ければ、ソケットの中心電極が分離する。

この爪は硬くて避けにくい。



中心電極を抜いた。



ネジを緩めれば電線が外れる。



外側の電極は、筒状金具を回して丸印のネジ頭を(A)の穴から見えるようにする。



この状態でネジを緩めれば電線が外れる。



電球ソケットが分離できた。



傷防止のため先にレンズを外しておく。

ズームレンズのような方式でレンズを繰り出す機構。

丸印のネジを外すとレンズが外れる。内部の板バネが一緒に外れるので注意



外した。丸印にフォーカシングの抵抗を作る板バネがある。

内側から押さえながらレンズユニットを引き抜くと良い。取り付けの際も同じ。

グリスを拭き取っておく。

組み立てる際は重めのグリスを塗る。ヘリコイドがないため普通のグリスでは軽くなりすぎる。



次にスライドに電球の光を照射する集光レンズユニットを取り外す。

丸印のネジを外す。スペーサー注意。

このネジは集光レンズユニットがボディ台座に対して前後移動する際のガイドの役割。



スペーサーは外側が一部平になっている特殊なもの。しかし方向性はないようだ



先程のネジを外すと集光レンズユニットが(1)方向にわずかに持ち上がる。

その浮かせた状態で(2)前方向に集光レンズユニットを引っぱると台座から分離する。

これがかなり硬く、この分解方法が分かるまでにかなりの時間を使ってしまった。



分離した。組み立てる際はモリブデングリスを軽く塗ってスムーズに動くようにする。



集光レンズユニットの後ろ側。大きなレンズの平らな面が見えている。



更に集光レンズユニットを分解する。

左右にある丸印のネジを外すと前カバーが外れる。

前カバーを取り付ける際はこのネジ穴が合いにくい。上や前から力を入れてカバーを押し、穴を強引に合わせながらネジを取り付けること。



前カバーは上に持ち上げると外れる。

硬いうえ、外すと丸印のレンズが落ちてくるので、押さえながら外す必要がある。怪我に注意。

レンズの見えている前側は平らな面。



外した。一番前のレンズも外してある。

前玉の後ろにガラス板1枚、凸レンズ2枚(前側凸)が入っていた。

ガラス板と2枚目のレンズは上に引き抜ける。後ろ側レンズはネジとナットで固定されている。



集光レンズ後玉のネジを外すのに、投影レンズユニットが邪魔なので外す。

矢印のバネを外せば(B)アームの軸である(A)ピンが抜け、アームごと外せる。

バネは底側からのほうが外しやすい。



外した。



ネジと後ろ側のナットを外せば後玉が外せる。ワッシャーは前後両方にある。



集光レンズ。上から前側。

前玉と中玉は同じ直径。厚みは中玉が少しだけ厚いように見える。後玉は直径が小さい。

カラス板は青っぽい色がついている。電球のオレンジ色を除去するフィルターの役目だろう。左側にボディのレールに取り付けるための金具があり、そのまま取り外せる。

レンズはカビがひどかったが、塩素系漂白剤できれいになった。

レンズには気泡が多く入っている。カメラのレンズと違い、プロジェクターではこの程度の品質で良いのかもしれない。




電源電極は使えないので取り外したい。



ネジx2で固定している金具ごと外れる。



外した。L字金具2つで固定されていた。ここも絶縁はベークライト。

ベークライトは絶縁性能が良いらしいが、かなり古いものなので信用はできない。ボディ全体が金属なので、この電極をコンセントに繋ぐのは危険な気がする。

使わない部品を保管しておくのもスペースの無駄なので、電線だけ外しておき、電極は飾りとして元通り取り付けた。



反射ユニット

集光レンズの後ろ側には電球の光を反射する反射ユニットがある。



反射鏡として、表面銀蒸着と思われる凹面ガラスが入っている。

全体に錆びているが、まだ反射の役割は果たしている。

なぜか固定爪の1つが激しく腐食していた。ヤスリで錆を落とし、つや消し黒で塗装する。

固定爪は筐体と一体で外せない。



反射ユニットを分離するのは、後部から見えているネジx2で良いだろう。

しかしカバーが邪魔でネジにアクセスできない。

カバーを分離できればいいが、カバーの前部は台座とカシメられており、外れない。



カバー後部は(A)バネと金具を外せば左右に別れそうだが『事前調査』で考察したとおり、台座の移動レール(B)が丸印で引っかかっており、外れない。

レールが外れないとカバー後部は左右に開かない。レールはカバーに引っかかっている限り抜くことはできない。

つまり(A)を外してもカバーは後ろに開かないと思われる。

試しに(A)を外してみたが、やはりカバーの後部は開かなかった。

しかし、これはやるべきではなかった。

カバー左右の間には2ヶ所の(A)のところに小さな窪みがあり、そこに楕円形の小さな金属プレートが8枚重なったものが入っていた。この窪みはカバー前部にあるものと同じ。

プレート8枚を窪みに入れて、2ヶ所同時にカバーを接続するのが難しく、元に戻すのにかなりの時間を使ってしまった。



余計なことをして苦労したが、隙間から小型ドライバーを入れてネジを外すことにした。



すぐ外れた。



反射鏡を固定する後ろ側の爪も筐体と一体になっていた。製造時はどうやって組み立てたのだろうか。

爪を曲げれば反射鏡を取り外せるが、元に戻せなくなる可能性が高い。

LED化する予定なので、反射鏡の錆は諦めて元に戻した。



投影レンズ

投影レンズを清掃する。

セオリー通り社名リングをゴムアダプタで回して外す。



前玉を外す。前に凸。



スペーサーリングを外す。



中玉を外す。両面凹で、前側が浅く、後ろ側が深い。



スペーサーリングを外す。



後玉を外す。両方凸で、後ろ側の凸が強い。

後はレンズを清掃して組み立てる。カビは塩素系漂白剤で落ちた。

集光レンズほどではないが、こちらのレンズにも少し気泡が入っている。



LED化

残されている電球は高出力のもので、このタイプはすぐに切れてしまう。代替電球もない。(LED化後に「モデリングランプ」という名称で今でも販売されていることがわかった)。

カバーを閉じた際の電球の収納スペースは前後に2.5cmしかなく、小型電球でも入らない。

そのため、照明をLEDに変更した。

FlexLEDを複数個購入し、平面展開するつもりだったが、想像していたよりLEDの技術が進歩しており、1つだけで鑑賞に耐える明るさを確保できた。

LEDは白色なので、集光レンズユニットの電球用フィルターガラスは取り外した。

電源はACアダプターに接続するようになっている。

オリジナルの部品は加工せず、レバーと台座を再利用するため、オリジナルの電球ソケット底部と同じサイズのものをタミヤのプラバンとL字棒で作成し、黒塗装した。

左右位置は元々調整機構があるので、上下位置のみネジで調整できるようにした。

パワーLEDも考えたが、寸法上、狭すぎてヒートシンクが入らない。パワーLEDにする場合は後ろの反射ユニットを外してしまう必要があるだろう。