Canon AF35M(オートボーイ)の修理


遺品。

初期症状:

全体がカビと電池液でかなり汚れており、あまり気が進まなかったが一応分解した。嵌まり込んだ電池は、ネジザウルスで電池の先端を掴んで強引に回すと、電池が割れたが両方とも抜くことが出来た。

目次:

結論としては、単に電池接点を新しく作成しただけで動いた。複数箇所でプラスチック製の爪やピンが欠損していたが、粘着テープを使うなどして手抜きした。雑な修理だが、とりあえず写ればいい、という程度のカメラなので、これで完了としておく。


試写:

(blogの試写


(2017/11/13)
初稿


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カバーの分解

まず裏カバーを外す。ネジ3つで外れる。左下のみ短いネジ。



カシメを外すと裏カバーが外れる。丸はカシメの位置。このカバーは軍艦部と裏蓋スイッチをカバーしている。

カバーの内部、①裏蓋スイッチ周りは白い粉で汚れている。電池液と思われる。①には③バネが接続されているが、バネの端がかかるべきピン②が折れている。④は裏蓋の爪。折れてここに落ちていた。本来は爪やピンを作成してしっかり接着すべきだが、面倒なので裏蓋は粘着テープで閉じることにして先に進む。



トップカバーはカシメを外すと外れる。丸はカシメ位置。

次にレリーズボタンを回収しておく。



レリーズボタンを外したところ。レリーズボタンの裏の丸印の部分は、レリーズプレートの丸印にスライドで嵌る。



前カバーと裏蓋を外すため、先にグリップとセルフのラバーを剥がす。セルフはエタノールで簡単に外れたが、グリップのラバーは前側の真ん中あたりが強く接着しており、ラバーを破らないように注意しながらヘラに力を入れ、こそぐように剥がした。

セルフのラバーの下にはネジがあるので外しておく。



ネジを外すとセルフレバーが外れる。



サイドのストラップ取付金具のネジx3を外す。



外したところ。これで裏蓋が外れる。



外したところ。



前カバーを外していく。裏蓋内のフィルム巻取り軸の横に見えているネジx2を外す。



パトローネ側にあるネジx1を外す。



底側のネジx3を外す。電池蓋を開けたところのネジは銀色。写真右のネジは短い。

次に電池蓋は引き抜く。うまく揺らしながら引っ張ると抜ける。千切らないよう注意。

カバーが一部破損しているので後で接着しておく。



電池蓋に隠れていたネジx1外す。これで前カバーが外れる。



外したところ。フラッシュスイッチの電池液汚れがひどい。



前カバー裏。丸印にモルト。接眼部の遮光用と思われる。ISOリングは乗っているだけなのでそのまま外れる。



ISOリングを外して表に返したところ。赤で囲った部分はグラデーションがかかったフィルターになっている。これで照度センサーへの光量を調整している。最高感度のISO400が最も薄い。



丸印がCdSがある窓。ここにグラデーションフィルターがかぶさる。



電池接点の修理

電池接点周りを見たいので、周辺のネジを外す。電池室のサイドにネジx2があるが、写真右側はフラッシュユニットがかぶさっていて外せない。

フラッシュはスライドスイッチでポップアップするはずだが、スイッチが固着して動かない。擦って電池液をこそぎ落としたが、動かない。



スイッチに当て木をしてハンマーで叩くと動いた。一緒に丸印の横長のプレートも動いた。スイッチの裏で接続されているらしい。同時にフラッシュがポップアップした。



ネジが露出したので2つ外す。



カバーとフラッシュユニットが外れた。フラッシュのバネは外しておく。ビニル線はそのまま。



電池室は一体成型で外せなかった。隙間から固着した電池液を削ったら、電池接点ごと粉々になってしまった。完全に腐食していた模様。



電池接点はシート基板に直接ハンダ付けされているようにみえる。シート基板を裏返してみたい。フラッシュの下にある黒いスペーサー(?)を外す。スナップリングx2で外れる。これは「グリップリング」と呼ばれるタイプで、工具はマイナスドライバーでは代用できない。スナップリングプライヤー(軸用、φ3mm)が必要。取付時は先が細いプライヤーで締め付ければ良い。



黒いスペーサーを外したところ。シート基板の上にフラッシュをポップアップさせるプレートが乗っているため、シート基板は裏返せなかった。フラッシュポップアッププレートの上には、更に軍艦部のファインダーユニットが乗っているので、それを外す必要がある。

なお、赤丸がフラッシュユニットに引っかかる部分。ここが動くとポップアップする。



ファインダーユニットのネジの1つは見えている。



後ろ側のシート基板を軽くめくり、部品を引き出すと、もう1つのネジが枚数盤の下辺りに見えた。



枚数盤の上には巻き戻しスイッチがあるので、先にスイッチを外す。左側を持ち上げれば外れる。かかっているバネを外す。



スイッチを外したところ。丸印同士はリンクしていたので事前に確認しておくこと。



枚数盤のスナップリングを外す。すぐ下にスペーサがあるので注意。



枚数盤を外して裏返したところ。

裏蓋を開けた時にカウンタがSに戻るのは、枚数盤のバネの端①がピン③にかかった状態で回るため。戻る際にSで止まるのは、②が③に当たるため。

裏蓋を閉じれば④が矢印方向に移動して⑤のギザギザに当たり、枚数盤が戻るのを阻害する。



ネジ2つ外してファインダーユニットを外す。①と②がリンクしているのを確認しておく。更にファインダーユニットの下側にもリンクがある。



ファインダーユニットの下側で③と④がリンクしている。写真はファインダーユニットを持ち上げたため、既にリンクが外れている。リンク時は④が③の右側に位置する。そのままファインダーユニットを組み込むと④が③の左に来てしまうので、④を写真右方向に押して固定しながら組み込むこと。

次にシート基盤の上に乗っている①フラッシュポップアッププレートを外す。(1A)のスナップリングを外せばよい。その前に②のリンクを確認しておく。(1B)にはバネがかかっているので注意。



外したフラッシュポップアッププレート。丸印はフラッシュスイッチの裏側のピンとリンクしている。

先程スイッチをハンマーで叩いた際にこのピンが折れてしまっていた。フラッシュは使わないのでそのままにする。



前側にあるネジを外すとシート基板をめくれるようになる。



露出した電池接点。腐食がひどい。とりあえず電圧をかけてみると、突然モーターが動き出して巻き上がり、レリーズボタンを押すとレリーズ出来た。



銅板を適当に折り曲げて電池接点を作り、両面テープで固定。シート基板にはビニル線で半田付けして繋いだ。



電池蓋側も銅板を適当に切って両面テープで貼り付けた。電池を入れて粘着テープで蓋を閉めると、巻き上げ、レリーズ共に正常に動作した。光量に応じて絞りの形状も変化している。

メインの故障は電池接点腐食のみだったようで、修理は簡単に終わった。