遺品。前玉にカビ跡のような汚れがあって取れないのと、内部のホコリが多いので清掃する。ついでにヘリコイドグリスを交換する。
例によって田口由明氏のblogに修理記事があったので、それを元に分解する。
前玉の汚れに見えたものはガラス自体が侵されており、清掃では対応できなかった。写りにはあまり影響がないようなので、このままにする。
α7Ⅲ+ K&F Concept KF-NGE2
(2019/4/13)
初稿
カニの爪が邪魔なので外しておく。
デジタルカメラのみで使用予定なので、カニの爪は外して保管しておく。ネジだけレンズ側に取り付けておく。
田口氏のサイトによると、フィルター環をゴムアダプタで回すと前群レンズごと外れるとのことだが、固くて回らない。
とりあえず矢印の距離環を外してみる。ネジx3。ネジは接着されていたのでアセトンで緩める。
外した。
GN爪を上にスライドして外す。裏に鋼球があるので飛ばさないよう注意。
外した。丸印は鋼球がかかる窪み。鋼球は外した爪の裏側にくっついていた。
GN爪を裏返したところ。爪の裏、中央の穴には、奥側から順に「バネ」「台座」「鋼球」が入っていた。
やはりフィルター環が外れない。とりあえず前玉の押さえ環と思われるリングを外してみる。
外してみると、押さえ環ではなく飾り環だった。
横から覗くとネジ山に穴が空いている。ここにアセトンを注入して少し待ってみる。
するとフィルター環が回り、外れた。
情報とは違い、外れたのはフィルター環だけで、レンズは外れない。参考記事とはバージョンが違うらしい。
次にマウント側から外していく。
マウント環を外す。ネジx5。ネジはすべて接着されているのでアセトンで緩める。
外した。
マウント環を裏返した。絞り込みレバー(丸印同士)がリンクしていた。
マウント環側のレバーは常に絞り込む方向に力がかかっているので、組立時は鏡胴側も絞り込み側にして組み込む。
次に(A)絞り環を外す。
先にリンク箇所を確認しておく。絞り環から出ている長いネジが、丸印で鏡胴の(B)絞り操作金具にリンクしている。これによって絞り環の動きで絞りを操作している。
絞り環はそのまま後ろ側に抜ける。クリック感は鋼球ではなく板バネなので気をつけなくてよい。
外した。
指標環を外す。ネジx4。指標「●」がちょうど絞り環のクリック感板バネ(A)のところに来ると覚えておく。
外した。
次に前側から鏡胴を外す。ネジx3。接着されているのでアセトンで緩める。
そのまま前に鏡胴を抜こうとしても、いろんな箇所が引っかかって外れにくい。写真のようにマウント側から引っかかり箇所を確認し、鏡胴を回して角度を変えながら抜く。特に矢印の絞り操作金具は引っかかりやすいので、引っかからない位置に動かして避ける。
外した。
前玉は押さえリングを回して外すと取り出せる。前側に凸。
前玉のカビ跡だと思っていたものは、ルーペで観察するとガラス表面が泡立ったようになっていた。清掃では対処できない。前玉なので影響は少ないだろう。
後玉はキャップを掴んで回して外せば取り出せる。貼り合わせレンズで、後ろに凸。
内部のホコリを清掃する。中玉は鏡胴を分解しないと取り出せないようだ。取り出さなくても前後から清掃できたので、鏡胴は分解しなかった。
グリス交換のため、ヘリコイドを分離していく。
(A)は直進キー。反対側にもある。内ヘリコイドに固定されていると思われる。直進キーは(3)外ヘリコイドの直進溝に沿って前後に動く。
まず無限位置を記録する。
(2)中ヘリコイドを右回りで締め込んで無限遠にする。無限位置で板バネと直進キー溝に合わせて(2)をケガく。
後でわかったが、このレンズはヘリコイドが1条ネジなのでケガキは不要だった。
最短側の位置を確認しておく。左に90度くらい回すと最短になる。(A)が(2)に当たる位置に窪みがあることを確認しておく。
写真は前から見たところ。金色の筒が(1)内ヘリコイド。直進溝は(2)と(1)の間の(4)銀色のリングにも切られている(丸印)。
直進キーx2を外す。
(2)中ヘリコイドが無限を超えて回るようになる。(2)を止まるまで右に回す。半回転直前で止まった。
止まった位置で(2)の無限ケガキに合わせ、(3)に終端を示す2本線のケガキを入れる。
1条ネジなのでこのケガキも必要なかった。
ここで筒の内側から(1)内ヘリコイドが引き抜けることに気づいた。ネジ山が切られていない「内ー外」筒同士が滑る方式だった(田口氏の用語では「滑空ヘリコイド」)。
(3)外ヘリコイドには内側に(4)筒が固定されており、それが(1)内ヘリコイドと滑っている。
(2)を左に回して慎重に抜いていく。
1条ネジなので普通に抜いてよかった。
11回転半ほどで外れた。外してみて1条ネジだと分かった。外れ位置の記録は不要。
外したところ。(1)内ヘリコイド。(2)中ヘリコイド。(3)外ヘリコイド。
中ヘリコイドのネジ山部分には直進キーの溝が切られていた。この溝によって内ヘリコイドに固定された直進キーが押され、内ヘリコイドが前後してフォーカシングする。ズーム機構に似ている。
(3)と内側の筒(4)は外せなかった。(3)のネジ山は(4)との隙間にあるので直接洗浄できない。(3)全体をベンジンに漬け込み、ストロー洗浄用の細いブラシで古いグリスを落とした。
あとは新しいグリスを塗って組み立てれば完了。ジャパンホビーツールの#10を使用した。
フォーカス調整要素のないシンプルな構成だった。