トップカバーの分解 - Canon 7の修理 - mglss studio photography

トップカバーの分解 - Canon 7の修理

目次

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トップカバー取外し


フィルム室の巻き戻し軸を固定し、巻き戻しクランクを左に回して外す。



ここには油分が残っていない。組み立ての際は軽くグリスを注油する。

ワッシャーを外す。





巻上レバーのカニ目ネジを外す。



個体Aはグリスが多い。汚れているが、まだまだ潤滑油として機能している。

個体Bはほとんどグリスが残っていない。組立時はしっかり注油する必要がある。

次に四角穴のワッシャーを外す。



板バネを外す。外側が上がっている。



ワッシャーを外す。



巻上レバーを外す。



巻上伝達金具を外す。





A-R環を外す。側面のセットネジ×3。





速度ダイヤルを外す。"ASA400" にすると、側面の穴に隠れていたセットネジが見えるようになる。

取り外し前の速度設定は "B" とする。メーターの指標の右のF値盤の値が、赤字の "16" になることを記録しておく。

L×1は長いネジで、外す。

S×2は短いネジで、緩めるだけでいい。緩めすぎると次に示す感度値盤にネジが干渉し、速度ダイヤルが外れなくなる。



感度値盤を外すが、その前に位置を記録しておく。指標の少し下にDIN値 "21" がある。

中央の茶色い板バネも外しておく。バネは外側が下がっている。板バネは個体Aが1枚、個体Bは2枚入っていた。




ギアAが回るとメーターのF値が変わる。Aには感度値盤裏側のギアBがリンクしていた。組立時はAを回してメーターのF値盤を記録した状態(赤字の "16")に戻しておく。

通常は板バネの抵抗によって速度ダイヤルと感度値盤が一緒に回るので、速度ダイヤルの操作でメーターのF値が変更される。

感度変更ボタンCを押すとDの部分が上がり、感度値盤が動かないように押さえつける。この状態で速度ダイヤルを回すと、感度値盤は回らず、速度ダイヤルのみが滑って回る。これによって感度値盤と速度ダイヤルの位置関係を変更している。



シンクロ接点のカニ目ネジを外す。



シンクロ接点の外側部品を外す。





トップカバー側面のネジ×1を外す。



トップカバーを上に引き上げると外れる。

個体Aはすんなり外れたが、個体Bは非常に固く、滑り止めのゴムで掴んで少しずつ引き抜いた。



トップカバー内部

トップカバー内は黒い粉で汚れている。ファインダー対物レンズの下にある、劣化したモルトプレーンが原因のようだ。

細い棒状のモルトプレーンが対物レンズの下に貼られているだけなので、この状態で貼り替えられる。

しかしこの時点において、平面のモルトプレーンの上にファインダーユニット全体が乗っているものと勘違いしたため、本記事ではここからファインダーユニットをボディから分離している。通常、ファインダーユニットを分離する必要はない。



トップカバー側、対物レンズ開口部の周囲にも劣化したモルトプレーンがあるので張り替える。
恐らく1.5mm厚。2mm幅で、横28mm、写真右側縦19mm、写真左側縦13.5mm。



簡単に構造を見ていく。カバー裏側。

セレンより2本、A、Bのマイナス側のビニル線が2本出ている。Aの黒い線は小さい出力、Bのグレーの線は大きい出力。Cではプラス側電線がトップカバーそのものに接続されている。

セレンユニットはD,E,F,Gの4箇所で金属の爪を折り曲げて固定されているように見える。DとEは上から接着剤で固定されている。




Hはボディ側のメーターとの接点。セレンからは黒い線がHに繋がっている。つまり通常は小さい方の出力を使う。

Jにはセレンからのグレーの線が接続されている。感度切替ダイヤルKを回して高感度にすると、Lの部分が回ってJを押し、JとMがショートする。MとHは一体の切片で、これによりセレンからメーターに伝わる出力が大きくなる。




Nはブライトフレーム切替ダイヤルのピン。ダイヤル操作と共に矢印方向に動く。このピンはボディ側のブライトフレーム切替カムの穴にリンクする。写真は "35" の状態。



ボディ側を見ていく。

T1はトップカバーのセレンからの出力との接点。個体Bのメーター不動は、この接点が汚れているだけだった。少々ヤスリでこすっただけでメーターが動き出した。

T2はブライトフレーム切替カム。トップカバーのフレーム切替ピンがこの部品の穴T2aにリンクし、矢印方向に動かす。写真は広角側の "35" 。組立時はこの部分噛み合うように状態を合わせる。

T2を望遠側に動かすとT3が左に押される。するとT3に固定されているT4も左に移動する。T4aの部分で引っ掛けられているブライトフレームマスクも左に移動し、ファインダーフレームが切り替わる。

T4は右方向にバネの力がかかっており、T2が広角側に戻ると自動的に右に戻る。この戻る動きが粘っているため、フレームの切替がゆっくりになっていた。

T3とT4は強く擦れるが、注油すべきかどうかわからない。T3は下側が面で擦れるので、油で貼り付いてしまう可能性がある。



前側からブライトフレーム部を見たところ。

T6はブライトフレームの窓。トップカバーの採光部から光を受けてブライトフレームを映し出す。この窓をよく見ると、あらかじめすべての焦点距離のフレームが見えている。全体は茶色い不透明で、フレーム部分だけ透明になっている。

T5はT4aに引っ掛けられており、T4と一緒に動く。T5はどの焦点距離のフレームを表示するかを決めるブライトフレームマスク。



ブライトフレームの切替が遅い問題を解決したい。

丸印のeリング×2を外す。eリング直下にワッシャー。矢印のバネを外す。



部品を外したがそれほど汚れていない。ベンジンで清掃して組み戻したが、症状は改善しなかった。「鍵穴のクスリ」の粉末(ボロン)で潤滑してみたが、効果はわずか。

(ここでeリング取り付け時に手を滑らせ、プレートに傷をつけてしまった。)

どうやら、この部品が動かしているブライトフレームマスクの動きが悪いようだ。ファインダーユニットは外すつもりだったので、後で対処することにして先に進む。



ファインダーユニットの上にメーター針がある。ファインダーユニットを外すにはメーターユニットを先に外す必要があるようだ。

まずはF値指標盤を外す。ネジ×2。



(※ここでは遮光板を先に外しているが、F値盤とメーターを先に外した方が良い。するとメーター針を避ける必要がなくなる)

遮光板を外す。ネジ×2。外す際はメーター針が邪魔になるのでうまく避ける。



F値盤を外す。ネジ×1。ネジ直下にバネ状のワッシャーがある。外側が下がっている。

なお、F値盤は外周がギアの歯になっており、感度ダイヤルで操作するギアAと直接リンクしている。






メーターを外す。ネジ×2。ワッシャーあり。

プラスの電線はAからメーターのBのネジへ繋がっているが、電線がファインダーユニットに踏まれており外しにくい。

一旦メーターを後ろ側に外して手で保持し、Bのネジを外してメーターから電線を外す。

メーターは強力な磁石なので、ネジやワッシャーが内部に吸い込まれないように注意。



メーターの上にセロテープが貼られている。絶縁用か。触るとボロボロに崩れたので貼り直しておく。



メーターの底にはゼロ点調整部分がある。



ファインダーユニットを分離していく。

(※本記事ではこのままファインダーユニットを分離するが、後で説明するシャッター制御ユニットの分離を先に行ったほうがよい。)

ネジ×2を外す。Bの方がAよりねじ山1段分長かったが、これは製造上の誤差か。



ネジ×1を外す。二重像ミラーのアームが少し邪魔なので、指で押して前側に避けながらネジにアクセスすると良い。



これでファインダーユニットが外れるが、距離計コロが引っかかるので、指で後ろ側に押しながら外す。



そのままでは二重像ミラー部分がシャッター速度制御部に引っかかってしまう。ファインダー部分を上に持ち上げ、斜め上に引き抜くと外れる。





個体Bはプリズムが何箇所か破損している。外部から衝撃が加わったのか。



肝心の劣化したモルトプレーンだが、ユニットごと外してみると、細い棒状のものが対物レンズの下に貼られているだけだった。ここまで分解する必要はなかったようだ。1.5mm厚、縦1.5mm、横28mm。



ファインダーユニットの機能を確認しておく。

丸印は二重像の上下調整ネジ。偏芯ネジでミラーを押して傾ける。トップカバーを取り付けた状態でも調整可能。



距離計コロ。レンズのヘリコイドに押されて前後に動く。



距離計コロが動くとAとBが回転運動する。

AはブライトフレームのピンEを押してパララックス補正する。

BはCaを押して二重像アームDを動かし、二重像の左右移動を行う。

CaはネジCの先端。Cは二重像の左右調整ネジ。トップカバーを取り付けた状態でも調整可能。



ブライトフレームを分離する。ネジ×2。二重像アームを避けるとネジを外しやすい。

個体Bは左側のネジだけワッシャーが入っていた。



分離した。露出したプリズムの面を清掃しておく。



3つに分離した。

全体が油で汚れていたので清掃した。ブライトフレームはキッチン用中性洗剤と水で、金属部分はベンジンを使用した。

するとスムーズに動くようになり、ブライトフレームの切替粘りの症状はなくなった。



その他、必要な箇所を清掃しておく。接眼レンズはネジx1で分離できるので、汚れている場合は裏表を清掃しておくと良い。



対物レンズはいくつかのレンズで構成されており、それが金属板でカバーされている。

軽く接着されているので、エタノールで接着剤を緩めながらカッターを差し込んで剥がせば清掃できる。金属板は非常に薄いので変形させないように注意。

個体Aは隙間からブロワーで吹き飛ばすとキレイになったので、カバーは剥がさなかった。

個体Bは内部にカビがあるのでカバーを剥がして清掃する。



剥がした。矢印の隙間から綿棒などで清掃する。ガラスクリーナーを使うとカビが取れた。



巻き戻しクランクが粘るので、軸を抜く。

軸を固定しているバネを少し緩めると、フィルム室に軸が落ちてくる。



軸と軸穴を清掃する。バネと擦れる部分に注油しておく。



シャッター制御ユニット

どうもシャッター速度の制御ユニットはネジ×3で簡単に外れそうだ。本来、ファインダーユニットを外す前にここを分離しておくのだろう。ネジは右下だけ頭もピッチも大きい。

矢印のバネのかかりを外しておく。

一応、簡単にこの部分の機能を見ておく。

Aはスローカム。カムに押されてBが動き、Bに押されてCが動く。Cはボディ下方のスローがバナーまで繋がっている。

Bが接着ドメされているところ見ると、Bはスロー秒時の調整用だろう。



後ろ側から見たところ。矢印のハンダを外す。各所のリンクを確認しておく。



前側から見たところ。矢印のレバーは速度制御ユニット分離の際に引っかかりやすいので注意。



引っかかる部分A、B、Cを避けながら速度制御ユニットを外した。各所を清掃、注油する。



機能をざっくり見た目で確認しておく。詳しく調べたわけではないので間違っているかもしれない。

Aは高速レバー。Abは高速カムDにぶつかり、Aaは速度制御ユニット下端の速度カムにリンクする。

高速カムDはネジ3つを緩めると調整できるようだ。高速秒時が合わないときはここを調整するのだろう。

Bは "B" と "T" モードの制御用?

Cは "T" モードの制御用?

Eはよくわからないが、"1/15" と "1/30" のときだけ動く(後述するが、外カバー内側にある機構を使ってスローガバナーの抵抗を受けている)。

Fはスローレバー。GはFと一緒に動き、下方のスローガバナーまで繋がっている。

Gはシャッターが切られるとDの下にある爪とぶつかって阻害する。爪はGを押していき、Gはスローガバナーの力を受けながら回転する。Gが爪の動作領域から外れると爪が一気に回り、後幕が走る。

この辺りの擦れる部分と、Xの軸の部分に注油しておけばいいだろう。



速度制御ユニット。

1は速度カムで、前述のAのAaとリンクする。

2は "T" モード時にCを動かすカム。

3は "1/15" と "1/30" のときにEを動かすカム。

4はクリック感を生む部品。

4aは5にぶつかって速度ダイヤルの回転制限。

こちらも擦れる部分に注油する。



クリック感は板バネの丸印の部分で作られている。丸印の裏側に鋼球が入っているのだろう。

なお、速度制御ユニットは動作確認のため、組み立てまで仮取付しておくと良い。


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