トップカバーの分解 - Canon 7の修理 - mglss studio photography

ボディの分解 - Canon 7の修理

目次

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ボトムカバー

次にボトムカバーを外していくが、逆さにするとレリーズボタンが落ちるので、外しておく。



ボトムカバーを外す。ネジ×2と、カニ目ネジを外す。



矢印のワッシャーを回収しておく。



裏蓋ロックの動きが悪いので分解清掃する。

カニ目ネジを外す。固いのでエタノールを流し込んで10秒ほどプラハンマーで叩いてから外した。



黒いロックカムを外す。側面に植毛紙が貼られている。劣化はしていないのでそのままにする。



カムの裏側にはワッシャーがある。個体Aは2枚、個体Bは3枚入っていた。ワッシャーには切り欠きがあり、ロックノブの突起と噛み合う。

銀色のロック板を外す。



裏側のロックノブがそのまま落ちる。



板バネを外す。外側が下がっている。板バネは方向性があり、片側に平らな部分がある。この部分はロックノブのノブ部分と反対方向に位置していた。



清掃、注油する。



底部はシンプル。写真はチャージ状態。

擦れる箇所はBとCなので、注油しておく。

Aはレリーズボタンを押すと写真手前に持ち上がってくる。これが斜めになっているBを押し、Cの係止が外れる。するとDが高速回転して先幕が走る。

EとFは幕のテンション調整用。Eが後幕用、Fが先幕用。どちらもギアが爪Hで固定されている。

シャッター速度を調整したいときは、ネジGを緩めて爪Hを避け、E、Fのギアのカニ目を回せば良い。

個体Bは、露光フレーム右側に比べて左側の露光時間が少しだけ長かった。後幕のテンションをギアの歯1つ分だけ強めると、フレームの左右で露光時間が一致した。若干シャッター速度が速くなってしまったが、許容範囲。



外カバーの分離

スローガバナーやセルフタイマーを洗浄しておきたいので、外カバーを外していく。マウントのネジ×4を外す。Lは長い。Sは短い。



調整ワッシャーを外す。念のため、マーカーで上下方向と裏表がわかるよう、印をつけておく。



写真では分かりにくいが、更にもう一枚、左下側半分だけの調整スペーサーが入っていた。平行調整用だろうか。非常に薄く、簡単に破れそうだ。既に折れ曲がった形跡がある。気をつけて外す。これもマーカーで印をつけておく。

個体Bは右下のネジ穴の部分にだけ薄い調整スペーサーが入っていた。



外カバーのネジ×4と、マウント部のネジ×2を外す。



すると外カバーが外れる。貼り付いていて固いが、引っかかる部分はないので少しずつ引っ張れば外れる。外す際にセルフタイマーが動く音がする。

矢印のセルフタイマー伝達金具は乗っているだけなので、回収しておく(ボディを立てると落ちる)。

4箇所にモルトプレーンが貼られていたようなので、張り替える。かなり薄くなるまで押しつぶされるので、1mm厚とした。



ボディ内部

内部の機能をざっくりと見ておく。

巻上側が太いドラム1本に見える。Pentax SVでは先幕用と後幕用の2本の細いドラムがあった。試しにシャッターを切ってみると、Aの部分が後幕用で、Bのリボン部分が先幕用らしい。同じ軸を使っているが、別々に動作する。

ネットで調べてみると、ドラムが太いのは古い時代の仕様らしい。このドラムの軸に高速カムがそのまま接続されているため、ドラムの1回転以内で幕の走行が完了しなければいけない。そのためにドラムが太くなっている。Pentax SVでは、高速カムはギア比を変えた別の軸で回転していたのでドラムは1回転以上してもいい。

注油は軸の部分にしておけばいいだろう。AとBは別の機構なので、この隙間にも縫い針にオイルを付けて注油しておく。



巻取側はCが後幕用、Dが先幕用。Eは後幕リボン用のコロ。



STはセルフタイマー。SGはスローガバナー。

スロー秒時は速度ダイヤルによってAの部分が押され、Bの部分が動く。Bからシャフトを伝ってCの部分でスローガバナーの抵抗を受ける。

Dは巻取側後幕軸とリンクしたギアで、幕が走りきる際にスローガバナーの抵抗を受けて減速するようになっている。バウンス防止用のブレーキの役割だと思われる。



シャッター制御部のスローカムにAが押されると、一緒にBも移動する。Bに接続されているEの位置も同様に変化する。Eはシャフトを通じてスローガバナーの抵抗を受け、回転する部分。

シャッターが切られると後幕と共にFが回転しようとするが、スロー秒時ではEにぶつかって抵抗を受ける。写真はチャージ状態で、Fの進行方向にEが位置している。

Eがスローガバナーの抵抗を受けながら回転してFの動作領域から外れると、Fは一気に回転して後幕が走る。Eが奥に入り込むほど、Fが抵抗を受ける時間が長くなる。



下部のスローガバナー周辺の様子。

Gは先程のEとシャフトを通じて繋がっており、EがFに押されるとGも回転する。その際にスローガバナーのHの部分を押して抵抗を受け、ゆっくり動く。

スローガバナーを外して組み立てる際はGとHの位置関係に注意すること。



チャージ完了前にレリーズボタンの押下をロックしている箇所は複数あるようだが、そのうちの一つはセルフタイマーの下の部分。

Aはレリーズシャフトで、レリーズボタンとともに下に下る。チャージ完了前はBがその動きを阻害している。

チャージするとドラムとリンクしたギアCが回転し、チャージ完了時に写真にはないCの突起部分でBのBaを押す。するとBが右に移動し、Aが押下できるようになる。

しかしここを避けてもチャージ前はレリーズボタンを押下できないので、ここ以外にも阻害する場所があるのだろう。

この阻害部分に注油しておく。


セルフタイマーとスローガバナー

セルフタイマーの動きを見ておく。写真はチャージ状態。

Aはレリーズシャフトで、押下するとAaがBを押し、Cの係止が外れてタイマーがスタートする。

タイマースタート直後はBはCの係止を外すための僅かな距離しか動けない。AaはBにより阻害され、Aを押し込むことはできない。

タイマーが動いていくと、Dが回転してAbを押し、レリーズプレートを押下する。この動きでレリーズ開始する。



セルフタイマーの動きに問題はないが、一応外しておく。ネジ×2。接着ドメ。



ベンジンに浸けて洗浄し、軸受とアンクルの足に注油する。表側は軸受が部品に隠れている部分があるので、縫い針にオイルを付け、横から差し込んで注油すると良い。ゼンマイバネにはグリスが塗られていたようなので、注油し直しておく。



外カバーの取付時は少しコツが必要。このままではセルフが戻りすぎており外カバーのセルフレバーと噛み合わない。

一旦、セルフタイマーをペンチなどで回して係止状態にしてから伝達金具を乗せ、セルフレバーの角度を噛み合うように調整しながら外カバーを取り付けるとよい。



ここまで分解したので、ついでにスローガバナーも外しておく。ネジ×2。右上が大きいネジ。



ベンジンに浸けて洗浄後、軸受とアンクルの足に注油する。

組み立ての際はボディ側レバーとの位置関係に注意。



カバー側を見て気付いたが、内側に何らかの機構がある。速度制御ユニットからスローガバナーに繋がっている。どうもアンクルを移動させて無効化し、抵抗を小さくするものらしい。

"1/30" と "1/15" で使われるもので、この2種類の速度だけ、この機構を使ってスローガバナーの抵抗を利用した速度調整が行われているようだ。外カバーを外した状態だとこの機能が働かないため、"1/30" と "1/15" で秒時が遅くなる。


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