シャッターユニットのメカニズム - OLYMPUS Pen FTの修理

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シャッターユニットのメカニズム

以下、説明文上の写真にない部品は番号にカッコ()を付けて示す。

シャッターの動作は完全には調べていないので、分かった部分のみ説明する。巻き上げると13→14と回転が伝わり、14からスプロケットを通して底部のギアに伝わる。



回転は上部側の14から、底部側の15→16→17と伝わる。巻き戻しボタンがはまる18も回転する。



(17)と固定されているクラウンギア19も一緒に回る。更に19→20と伝わる。

シャッター板と接続する21は巻き上げでは回らない。20と21はバネ22でリンクしている。チャージで20は回るが21は回らないので、バネ22がチャージされる。これがシャッター板のチャージとなる。



23は20の逆転防止爪。これがシャッターチャージでの一連の逆転防止になる。



写真は写真はバルブ、レリーズ状態。

24はレリーズで高速回転するホイール。24は裏側の(21)と固定されており、24の回転とシャッター板は同時に回転する。つまり24が1回転する速さでシャッター速度を作っている。

24の穴から一部が見えている24aは24と一体の部品。写真上に24を左右に裏返した状態を示す。

24の下には更に2枚の回転部品があり、全部で3枚の部品が重なっている。24の直下が25。さらにその下に26がある。写真上にそれらを示す。

24と25は他の部品を介してバネ(22)で接続されている。

25は26を介して裏側の(20)と接続しており、チャージを開始すると(20)の回転と共に25も回転する。(20)にかかる逆転防止爪(23)により25も逆転しない。

バネで接続された24も左に回転しようとするが、すぐに24aが27に係止される。隠れた係止部分の形状を青線で表した。

そのまま25は回転を続け、24と25の間にバネのテンションがかかる。これがシャッターのテンションになる。



写真はバルブ、チャージ状態。

チャージ完了で28と29がそれぞれ(25)(26)の切り欠きに落ち込んで右に移動する。

28はスローガバナーのアンクルを制御する部品で、チャージ完了でアンクルをスローガバナーのギア群と接続準備状態にする。

写真では見えにくいが、黒い部品の29はレリーズロックのようだ。チャージ完了前は30の動きを阻害しているが、チャージ完了で移動してレリーズロックを解除する。

レリーズは30がミラーユニット側から左に押されてスタートする。30aが27を押して24aの係止を解除する。すると24が左に高速回転する。

「B」では、レリーズボタン押下で31→32と伝わって32が下に移動し、24aを係止する。その間シャッターが開いた状態になる。

それ以外では31の位置が速度カム33によって変わり、32へのリンクが途切れる。

「B」以外では、レリーズスタートで24bが34に当たる。ここで24と共にシャッター板が半回転して開く。34は24bに押されて移動する。34は35を介してスローガバナーに接続しており、設定した速度に合った抵抗を作る。24はその抵抗を受けながらゆっくり回転していき、一定角度回転すると34に当たらなくなって一気に回転し、シャッターが閉じる。

33のカムが速度設定ダイヤル。これを回すと34の位置が変わり、24が抵抗を受ける距離が変わる。

またS1も33によって位置が変わり、スローガバナーの抵抗を切り替える。写真の「B」では抵抗が一番小さい状態。


レリーズの最後で24aが25aを押して少しだけ回転し、元の位置に戻る。

直前まで37が25の窪みに落ち込んでいるが、この最後の回転で右側に押し出される。37はミラーユニットの部品を押し、ミラーが閉じる。

これで一連のレリーズ動作が完了する。



写真は部品破損のため34、35が無くなっているが、このまま説明する。

S2はアンクル。チャージ中は28が左に回るため、28aがS3を上から下に押し、アンクルの接続をを外す。

チャージ完了で28は右回転するので、28aは避けるが、S3のピンがS4に係止されてアンクルはまだ接続しない。

レリーズ時は30bがS4を左に押して係止を外し、アンクルが接続される。

低速モード時はアンクルの負荷ありで動くが、高速モードではS1aが右に移動してS3のピンが上がるのを阻害し、アンクルが接続されない。

速度モード切り替えでS1が動き、S5がS1に押されて動く。S5はガンギ車に接続するギアを2種類切り替えて負荷を変えている。S5が右側に位置する方が負荷が高い。

破損して写真にはないが、24bが蹴る34は、その軸38自体にバネの抵抗がある。38は裏側の38aと接続しており、それがバネ入りドラムのピン39を押す。


追加の分解

部品が破損して復旧できないので、参考までに簡単に外せる部分を適当に分解してみる。

24のホイールを外すには丸印のネジを外す。逆ネジ。アセトンで緩み止めを溶かしておく。



写真はチャージ状態。ネジを外す前にレリーズしておいた方がいい。

ホイール外すが、強いバネの力で左に回ろうとするので、部品を飛ばさないよう注意。



24:ホイールを外したところ。

取り付け時はうまい方法が思いつかなかった。24を右に回して初期チャージをする必要があるが、バネのテンションが強くて回しにくい上に、最終的に24aが25aを乗り越えて最初の係止状態にする必要がある。しかしネジを締めてしまうとそれはできない。

とりあえず、一旦ボディにシャッターユニットを取り付けて巻き上げレバーでチャージした後、(25が左回転する)、この24を固定している逆ネジを緩めて24を浮かし、右に少し回して24aが25aを乗り越えると、なんとか初期チャージができた。24と軸が外れないように注意しながら24を浮かす必要があり、少しコツがいる。この個体では1回チャージでOKだった。

次に矢印のカニ目ネジを外す。ここも逆ネジ。



非常に固かったためネジをかなり舐めてしまった。

25を外す。





25を裏返した。25の突起と26の窪みがリンクしていた。

ここはこれ以上は分解できないようだ。

次に27を外してみる。

組み立て時、この部品はネジを締め込むと動かなくなる。ネジの締め込みを適当なところで止め、接着止めにする必要がある。



40の部品の役割は確認していない。後で写真を確認すると、チャージ時のレリーズ阻害用に見える。

あくまで想像だが、チャージで26が左に回転すると、40が右に押される。40の軸の反対側が29を押す。40も29も一部が隠れて見えないので、青線で形状を表した。

すると30が左に移動しようとしても、30bの裏側にある突起が29に衝突して動きが阻害される。



次にシャッター用のバネを外してみる。ネジ×1。



個体Yは矢印のリングがなく、バネの先端は丸印の穴にかかっていた。



更に部品を外していく。



レリーズボタンを押すと41が下に移動し、次に42のピン42aが右に移動する。この時42は29を押す。26の状態によっては29が26に阻害されて右に動けないので、その時はレリーズボタンが押せなくなる。

次に28を外そうとしたが、軸のカニ目ネジが固く外せなかった。裏側を見るとネジ先端の中央が叩いてつぶされているので、外すのは無理かもしれない。

まだ外せそうな場所があるが、だいたいメカニズムがわかったのでここまでとする。


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