Rolleiflex SL26の修理 - その他

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腐食ペンタプリズムの再生

プリズムはセロハンテープが貼られていた部分の蒸着劣化が激しく、ほとんど視界が真っ暗になっている。

一旦、黒塗装をエタノールで剥がした後、数時間かけて固着したセロハンテープをスクレーパーで小削ぎとった。セロハンテープは溶剤に強いうえ、粘着面はガラスにピッタリくっついているため、溶剤が浸透しにくい。古くなって固着すると強固にガラスとくっつき、剥がすのが難しくなる。

銀蒸着は上から更に金蒸着で保護されていた。

プリズムの銀蒸着の劣化はOlympus OMシリーズが有名で、修理方法もネットで多数見つかる。それらは主に銀テープを貼り付けるものと、表面鏡を貼り付けるもの。

まずは銀テープを貼り付ける方法を試してみた。視界は明るくなったものの、ぼやけ気味でフォーカスが合わせにくい。この方法は一部分だけが劣化した場合に、それを目立たなくするためのものだろう。広範囲な劣化には使えなかった。

次に表面鏡を貼り付ける方法を試してみた。稜線部分には貼れないが、明るくシャープな視界が得られ、問題なさそうに見えた。しかし表面鏡は厚さが1mmもあるためトップカバーに収まらず、断念した。

後は銀鏡反応か、業者に再蒸着を依頼するしかないと思っていたところ、東急ハンズで「アクリサンデー ミラー調スプレー」というものを見つけた。透明アクリル板に吹き付けると、吹き付けた反対側が鏡のようになるという銀スプレーだ。

「ガラスには使用できません」と書かれていたが、ダメ元で試してみることにした。



説明書通り3回重ねで吹き付けたところ、内側が鏡のように反射するようになった。



この後、黒スプレーを吹き付けてボディに乗せると、見事にファインダーの視界が復活した。残っていた蒸着との境界部分が目立つが、実用上は問題ない。




そのままではプリズム抑え金具とバネが当たる部分が気になった。前修理者のようにセロテープを貼るわけにはいかないので、タミヤのプラバン(0.3mm厚)で簡易カバーを作成した。(赤で囲った部分を接着した)。



金具に当たる部分もなくなり、修理完了とした。



遮光カバーの分離

ミラーボックス内の両面テープを剥がすため、A遮光カバーを外しておく。ネジx3で外れる。

矢印はパーフォレーション検出ピン。このピンにバネの力がかかっているので外す際は注意。

写真は本体修理前のためミラーアップしているが気にしないこと。



外した遮光カバー。裏返している。検出品は矢印のスリットに入っていた。丸印は検出ピンを引っ掛けて引っ張っている位置。

組立時は丸印が矢印のスリットの位置になるようにバネを伸ばし、軽くテープ止めで固定。遮光カバーを取り付けて検出ピンを矢印のスリットに入れたら、テープを引き抜けばいいだろう。



ミラーボックスの分離

ミラーボックス内にある謎の両面テープを剥がしたい。

また、レンズ側から内部を覗いたところ、矢印のミラーの緩衝用スポンジがおかしな位置にあるのに気づいた。



実際にはミラーボックスはボディから分離していないが、おおよそ方法は分かっているので記しておく。
遮光カバーは先に外しておくこと。

フィルム室から見えている黒いネジ3を外す。



次に矢印のミラーを支えるピンを外す必要があるが、これは底側から固定されている。

ミラーボックスの内側に黄色く汚れて見えるのは両面テープ。



底側の革を剥がすとネジが出てくる。



外側にカニ目ネジ、中央にマイナスネジ、という特殊なもの。中央のマイナスは無視して外側のカニ目ネジを外すとピンが外れる。



外したところ。すぐ横の三脚台座が邪魔なので、このカニ目を回すには専用工具を作ったほうがいいだろう。



後は遮光板のピンを矢印のどちらかから打ち抜けばミラーボックスが外れると思われる。ボディ側面の丸印の位置には打ち抜き用の穴が開いている。長めの打ち抜き工具が必要。

手元にちょうどよい打ち抜き工具がなかったため、ミラーボックスは分離しなかった。両面テープは遮光板とミラーを指で持ち上げ、フィルム室側から剥がした。



緩衝用スポンジは左右でずれた位置になっており、右側は意味をなしていなかった。

外してみると、素材はトップカバーにあったプリズム押さえ用のスポンジと同じ素材。

スポンジはW3×H3×H2。厚みがありすぎてミラーアップ時にミラーボックスとミラーの間に隙間が出来ていた。



1.5mm厚のモルトプレーンを正しいと思われる位置に貼り付けた。これでミラーアップ時の隙間がなくなった。1mm厚も試してみたが、薄すぎてミラーが枠に衝突した。

ミラーもカビが広がっていたが、ハイターで除去出来た。



パーフォレーション検出の無効化

126フィルムは1フレームに1つのパーフォレーションで、135とは全く違う形式。

このカメラは126フィルムのパーフォレーションを検出してレリーズロックの解除、巻き上げの停止を行う。そのため、135フィルムを流用する場合に問題が発生する。具体的には、そのままだと孔が検出されないので、レリーズボタンにロックがかかった状態で押すことが出来ない。また、巻き上げは可能だが、1フレーム分で止まらず、どこまでも巻き上げることが出来てしまう。

135フィルムを使う方法はいくつかあるが、ここではパーフォレーション検出ピンを抜き取ってしまい、常にパーフォレーション孔を検出した状態を作ることにした。

まずは遮光カバーを外し、検出ピンを露出させる。写真の丸印が検出ピン。また、上ギアユニットが検出ピンとリンクしているので、上ギアユニットも外しておく。



これを手前に引っ張ると写真の位置で引っかかる。



左回りに回転させ、写真の角度になると手前に引き抜ける。揺らしながらうまく引き抜くこと。



抜き取ったピン。矢印の穴は上ギアユニットとリンクしていた部分。

これで常にパーフォレーション孔を検出した状態になった。これでレリーズボタンのロックは解除状態になる。




孔が検出されていると巻き上げが停止するので、このままでは巻き上げができなくなる。巻き上げの停止は、上ギアユニットの後ろ側にある矢印の爪によって行われる。この爪のバネを掛け替えて爪の動きを無効化する。



一旦バネを外し、爪の下側を通してフレームに引っ掛けた。爪が動かなくなり、巻き上げできるようになった。

この方法はバネに無理な力をかけているので、バネが変形する危険性がある点に注意。この掛け替えは、カメラの保管時は元に戻しておくと良いだろう。

これで135フィルムを使って撮影できるようになったが、問題点が2つある。

1つは中途半端なチャージ状態でもレリーズボタンが押せること。押してしまうとシーケンスが狂って動作がスタックする可能性があるので、必ずチャージが完了してからレリーズボタンを押す必要がある。

もう一つはいつでもレバーを操作すると巻き上げできてしまうこと。例えば巻き上げレバーを2回操作すると、そのまま2フレーム分フィルムが進んでしまう。巻き上げレバーを連続で操作していくと、フィルムの最後まで巻き上げることが出来てしまう。

また実用上は問題ないだろうが、1フレームごとの巻き上げの停止がないため、巻き上げ軸の直径に従ってフィルムが進むことになる。フィルムの最初は進む距離が短いが、巻き上げていくと軸に巻き付いたフィルムの分だけ直径が長くなるので、フィルムの最後の方はフレーム間の隙間が大きくなる。



126フィルムカートリッジ

126フィルムカートリッジを開けた。KodakのKodacolor-XというC-22現像の古いフィルム。最初は分解方法が分からなかったが、何度もカートリッジを捻っていると接着が剥がれて前後にカバーが分離した。

丸印が接着されていた部分。左右の縦ラインと角は強く接着されていたので、事前にカッターで切れ込みを入れたほうが良いだろう。

割れてしまった場合は接着剤で対応する。



丸印はフィルム室のカートリッジが当たる部分。正確には分からないが、ここからフィルム面までは約1.5mm。

無限遠の調整などでここにピントグラスを貼り付ける場合は、1.5mm程度のスペーサーが必要になる。



革の両面テープによる貼付け

今回から剥がした革は接着剤ではなく両面テープで貼り付けることにした。再度剥がしたり貼ったりするのが容易なため。両面テープは「日東電工 No.5000NS」の幅50mmタイプを使った。「ニトムズ はがせる両面テープ 強力接着用」の業務用幅広タイプ。

まず、革より少し大きめに切った紙製ガムテープをカッターマットに貼る。



その上に両面テープを貼り付ける。紙製ガムテープの表面は粘着テープがつきにくく、剥離紙として使えるため。

本当につきにくいのでしっかり押さえて貼っておく。



革を裏返して両面テープで仮止めし、革の形を竹串などで両面テープに型取りをする。直線は定規を使うこと。
型が取れたら革を剥がし、両面テープを型どおりに切り抜く。

両面テープをガムテープから剥がして革の裏に貼り付ける。

あとは両面テープの元の剥離紙を剥がし、革をカメラボディに貼り付ければ完了。