メカニズム - Hasselblad 500Cの修理

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メカニズム

ギアユニットのメカニズムを見ていく。基本的に写真に示した部品番号で説明するが、写真にない部品を文章で示す際は、番号にカッコを付けて (1) のように表すことにする。

写真はレリーズ位置。回転方向の矢印はチャージ時のもの。

1チャージギア。右に1回転弱でチャージ。2ラチェット爪で逆回転はしない。レリーズ時は静止。

3は中間ギアで、1の回転を間接的に5に伝える。1と3は直接リンクしておらず、1の裏側にあるギアと3がリンクしている。1と裏側のギアは固定されており、1と同時に動く。

3の中心には裏側からミラーレバーの軸が貫通しており、ネジ4で固定している。ミラーの動きに合わせて4が回る動く。

5はマガジン側ギア。二段ギアで、下段はマガジンのギアとリンクしてフィルムを巻き上げる。写真では左端に歯がない。5の上段は3とリンクしている。

6はゼンマイバネ。バネの端は外側が5a、内側が5の中心に見えている7aにかかっている。7aは裏側の遮光板ギアの中心軸。チャージ中は7aは裏側で係止されており、動かない。1からのチャージの伝達で5が回転すると、6が縮められてチャージする。レリーズ時に7aの係止が解け、7aが6の力で一気に回って遮光板が開閉する。写真では外してあるが、6の上にはホイールがゼンマイバネのカバーとして取り付けられており、7aと一緒に回転する。

レンズのチャージは、1->8->9とギアの力が伝わる。1と8は直接リンクしておらず、1の裏側のギア(3とリンクしているギアとは別)と8がリンクしている。1と8はチャージ時は1と8は同時に回転する。

9はレンズ側ギア。レンズへと繋がっており、その回転でレンズのチャージ、レリーズを操作する。カムにもなっており、カム面で13を操作する。

13はチャージマークレバー。チャージ前はボディカバーの窓に13b:赤いマークを表示してチャージ未完了を示す。

14はレリーズプレートで、レリーズボタン押下で左に動く。チャージ前は13aが14cを係止しているため動かず、レリーズボタンも押せない。



チャージ状態。回転方向の矢印はレリーズ時のもの。

チャージで右下の9が右に回転すると、9aが13cを押し、13cは上に移動する。13cの反対側、13の一番左端の13bが下に移動することで、チャージ窓の表示がチャージ完了を示す白になる。

この状態になると13aが下に避けるため、14aの妨害が外れて14が左に動けるようになり、レリーズボタンが押せるようになる。

同時にこのとき、13cが10aを左に押し、そのまま10aが11を押す。11は14bを押し、14全体が少しだけ左に動く。この動作の意味は不明。

レリーズボタンを押すと、レリーズプレート14と鋼線15が左に押され、レリーズ開始。14cがボディから飛び出て、マガジンにレリーズを伝える。

中央付近のピン12aは写真裏側で遮光板ギアを係止する部品の一部。これが動くと遮光板が開閉する。12aはバネ21によって常に上方向の力がかかっているが、レリーズボタンが押されていないと、上から11aに妨害されていて動かない。11は強力なバネ24で引っ張られており、11aは21より強い力で12aを妨害している。

レリーズボタン押下時、15は11bで11と接続されているため、11の下部が左に押され、上部は右に移動する。すると上から12aを押さえていた11aが上に避け、12aが動けるようになる。

12aが動くと係止が外れてゼンマイの力で遮光板が開く。このとき、遮光板ギアに固定されている22:ホイールが右に回転する。

正確には、11aが避けてもすぐには12aは動かない。写真裏側に12を妨害する機構があり、これはミラーアップが完了すると解除される。つまり遮光板はミラーアップ後に開くようになっている。

ミラーアップとレンズ側レリーズの役割は9が担っている。9は左回転方向にバネの力がかかっており、レリーズで左に回転する。リンクしている8は右に回転する。

レンズ側レリーズ開始は11によって1の裏で行われる。これは次の写真で説明する。

遮光板の動作はバルブで、レリーズボタン押下中は開き、ボタンを離すと閉じる。シャッターそのものはレンズ側にあるのでこの動作で問題ない。長い秒時では、レンズシャッターが閉じるまでレリーズボタンを押し続ける必要があるのはこのため。露光中にレリーズボタンを離すと遮光板が閉じてしまう。

レリーズによって、遮光板は「開く」と「閉じる」の2つの動作を行う。写真裏側にある遮光板操作ギアが1回転することで、遮光板が「開いて閉じる」という一連の動作を行う。実際には、レリーズボタンを「押している間は開き」、「離すと閉じる」という2段階の動作をするが、これは裏側の写真で説明する。



1:チャージギアの拡大写真。周辺の部品は外してある。1の直下に25があり、1と25は固定されている。

25はマガジン側ギア(5)への中間ギア(3)とリンクする。

16はレンズ側ギア(9)への中間ギア8とリンクする。

17は爪で、25と16のリンク状態を切り替える。17が押し込まれるとリンクが切れる。



チャージするとレンズ側ギア(9)にかかっている力が8を介して16に伝わる。

しかしこの状態では16と25がリンクしており、かつ25は1と固定されている。1はラチェット爪で係止されて左に回転しないので、16も動かない。

レリーズボタンが押されると11cが移動して17を押し、16と25のリンクを解除する。

すると16、8、(9)が一気に回転し、ミラーアップとレンズ側レリーズが開始する。



ギアユニット裏側。写真はレリーズ状態。つまり遮光板が閉じている状態。

12は遮光板ギアの係止部品。12aは表側に出ていたピンの裏側。

遮光板操作ギアは7と32の2つ。表側から中心軸の回転が見えていたのは上側の7。それぞれ突起7aと32aがあり、ここに遮光板アームが接続され、遮光板をギアの回転で開閉させる。

チャージでは12aが表側でα側に押されており、12bが32の回転を係止している。32とリンクしている7も動かない。

レリーズすると12がβ側に動いて12bの係止が外れ、32が回転する。リンクしている7も一緒に回転し、遮光板が開く。半回転したところで遮光板が全開になる。

そこで今度は12cが32を係止し、遮光板が開いた状態で止まる。

レリーズボタンを離すと再び12がα側に動き、12cの係止が外れて32が回転する。一緒に7も回転し、遮光板が閉じる。1回転したところで再び32が12bに係止され、止まる。

20はミラーカム。19:ミラーレバーを操作する。19は実際にはボディプレートを挟んだボディ内側にあるが、写真では説明のために仮付けしている。

20の軸は表側で見えていたギア(3)を貫通し、ネジ(4)で固定されている。



19:ミラーレバーの動きを説明する。写真はミラーアップ状態。

19aはミラーの突起を挟む部分で、ここでミラーを上下させる。

チャージするとミラーカム20が回転し、19bを押す。すると19が右に傾いていき、ミラーが降りてくる。

23:遮光板係止妨害部品が少し右に傾いている。この状態では12dが23に妨害されないため、12が上下に動くことができる。



チャージ途中。ミラーレバーがカムに押されて右に傾き、ミラーが完全に降りた状態。



このとき、ミラーは27:ミラー係止爪で係止され、ミラーダウン状態が保たれる。



チャージが完了するともはや19bは20に押されていないが、ミラーがダウン状態で係止されているため、ミラーレバーもミラーダウン位置を保つ。

このとき、23が12dを妨害するため、12が動けない。つまりミラーダウン状態では遮光板ギアの係止が解除されないようになっている。



レリーズが開始すると(9)の回転とともにその裏側のギア26も回転する。ミラー係止爪27がギア側面に押されて動き、ミラーから爪が外れる。すると一気にミラーアップする。

30はバネが入った軸で、26の回転でチャージされる。しかし26のチャージはバネ31がその役割を担っており、30の用途が分からない。バウンス防止用かもしれない。



ミラーアップすると23が右に避けて12dと当たらなくなるので、12が上に動けるようになる。すると32の係止が外れて遮光板が一気に開く。



ギアの側面のカムなど、隠れて見えない部分を点線で示した。32のカムが係止されている様子がわかるだろう。

18は遮光板が完全に開くまでレンズ側ギア(9)の回転を途中で止める部品。点線で示した7のカム面で18aが押され、反対側の18bが(16)を係止する。

(9)はレリーズ開始直後、少しだけ回転してミラーアップし、遮光板が開くまではそこで回転を止める。



表側から見ると、18bが16aを係止しているのがわかる。



遮光板が開くと18aが7のカム面の谷に落ち込み、18bが上がって(16)の係止が解除される。
すると(9)の回転が再開し、レンズ側のレリーズが開始される。



内部を見ると、この状態では18bが16aを係止していないので、16が左に回転できる。



チャージギア関係の内部を見ていく。写真はレリーズ状態で、チャージで右に回転する。

レリーズでは16bが27の左側に当たって制限になっている。



チャージ完了時は16bが27の右側にぶつかってチャージ制限になる。チャージ完了時は少しギアが戻るので、正確には写真よりすこし左に回った位置になるだろう。

レリーズすると16が左に回って27の左側にぶつかり、レリーズ位置に戻る。



爪17の動作を見ていく。17はチャージギア(1)の裏の(25)に固定されている。説明のため、仮に16の上に置いている。

写真はチャージ状態。16にはレンズ側ギア(9)から左回転の力がかかっているが、16cが17aに係止されており、(1)はラチェット爪で係止されているので、回転できない。



17がレリーズ開始で(11)に右に押されると、17aが動いて16cの係止が解除され、16が一気に左に回転する。

確かめてはいないが、16が左回転する途中、レリーズボタンが押し込まれている間は16cが17bで係止されるものと思われる。



33:ミラーアップボタンを操作した場合は、33により11dが押されるため、レリーズ開始時と同じように1と8のリンクが途切れて9が回転し、ミラー係止爪による係止が解除され、ミラーアップする。遮光板も開く。しかしレリーズプレートは動かないので、丸印の突起で9の回転がすぐに係止され、レンズ側はレリーズされない。

Aの黒いL字型金具はミラーアップレバーが上がりすぎないようにするための制限だろう。



ミラー係止爪27。ミラー側ギア(9)の裏にある黒いギア29とリンクしている。29はミラー側ギア(9)と同時に回転する。

レリーズ状態では27aが29のカム面に当たって押されており、爪がミラーを係止しない。

29を見ると、写真の右上にカムが無い部分がある。



チャージ中、ミラーが降りてくると27aが29のカムが無い部分に入り込み、爪がミラーを係止する。チャージ完了時もこの状態になる。



組立時はレンズ側ギア(9)をチャージする必要があるが、その際、そのまま回転させると29のカムの端と27aが干渉する。そのため、チャージする際は27を下に押して27aを避けた状態で行う必要がある。


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