minolta HI-MATIC 7の修理 - 分解

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目次:


トップカバーの分解

トップカバー分解のため、定石通り巻き戻しクランクを外す。フィルム室から巻き戻し軸に割り箸などを差し込んで固定し、巻き戻しクランクを反時計回りに回して外す。写真ではドライバーを差し込んでいるが、フィルム室に傷がつくので避けるべき。



外した部品。本体側、矢印にワッシャーが残っている点に注意。



クランクはネジとの間にワッシャーと板バネを兼ねたような金具がある。




外したところ。



更にカニ目ネジを外す。




巻き上げレバー上のカニ目ネジを外す。ペンチを改造したカニ目レンチを使い、傷をつけてしまった。元々傷だらけの個体なのでこのままで行くが、今後のためにもっと良いカニ目レンチを作成する必要がある。



外したところ。レバーはそのまま外れる。



外したところ。レバーを嵌める際、軸が時計方向に回りすぎていて嵌めにくいので、しっかりした先細のピンセットを使い、軸を少しだけ反時計方向に戻しつつ嵌め込む。



ネジ2箇所でトップカバーが外れる。そのまま外すとレリーズボタンが落ちてくるので、上下逆にして外すとよい。組み込むときも同じ。



外したところ。レリーズボタンを回収しておく。



ボタンは2つの部品に分離する。



トップカバーを外したところ。真上。



前。

これでファインダーの清掃ができる。ファインダーはレンズクリーナーで拭くだけで綺麗になった。

しかし清掃中、誤ってティッシュの端でハーフミラーをこすってしまい、その部分の蒸着が剥がれてしまった。元々剥がれ気味だったのに追い打ちをかけてしまい、2重像がうっすらとしか見えなくなった。一応ファインダーの曇りは解決したが、新しい問題が発生したので、この対応は別項で行うことにする。



後ろ。接眼部に腐食したモルトプレーンがあるので交換しておく。1mm厚。フェルトでは伸縮性が乏しく無理。手持ちの1.5mm厚のモルトプレーンを使ったら一応トップカバーは嵌ったが、キツイ。なお、裏蓋も1mm厚のモルトプレーンが必要。1.5mm厚でもなんとか閉まるが、力が必要。



ここで黒いプラスチックのギザギザした部品が脱落した。どうやら赤線で示した部分に接着されていたらしい。オート撮影で使用するもので、レリーズボタンが押されるとメーター針をこの部品に押さえつけ、固定するようになっている。ボンドで接着しておいた。



レンズ前からの分解

シャッター羽根にアクセスするため、とりあえずレンズ前方向から外してみる。

カニ目リングを外す。カニ目の切れ込みには傷がついて開いている。恐らく以前に分解されたのだろう。カニ目は緩く、ゴムアダプタで外せた。



外したところ。CdSユニットがそのまま外せる。



外したところ。その下の黒いプラスチックのリングも外れる。



CdSユニットを裏返すと、本体トップカバーから伸びている赤線との接続がある。ここの透明ビニールのカバーをずらして露出させ、ハンダ付けを外しておく。なお、CdSには極性がないのでマーキングは不要。



次に白いフィルター枠の筒全体を外す。ネジ3つ外す。青丸のみ銀色の縦長。



速度リングごと外れた。

説明の都合上、実際の分解と順番が違うため、写真ではレンズユニット全体が本体 から分離しているが気にしないこと。

右側、赤矢印の銀のリングが速度リング。赤丸の部分がシャッターユニット赤丸から出ているレバーと噛み合う。

水色矢印が絞りリング。水色丸の部分でシャッターユニット水色丸から出ているレバーと噛み合う。

速度リングと白いフィルター枠の橙丸同士はオートのときに噛み合い、オート時にリングが回らないようにする。オート解除ボタンでこの噛合が外れる。分解・組み立て時はオートにしておくのが正しいと思われる。



フィルター枠と速度リングを分離した。写真は裏側から見ており、オート時と角度を合わしてある。



絞りリングはそのまま外れる。赤矢印の部品が残っているので注意。保管しておく。写真の状態は1/500、F1.8。

真ん中の前群レンズは手でねじって外せる。



外したところ。シャッター羽根が露出した。つついてみたが、全ての羽が張り付いて微動だにしない。

銀色のシャッターカバーは見えているネジで固定されているが、サイドのSEIKOSHA-LAの銘板とセルフスイッチが引っかかって外せない。

前から外すのはここまでなので、レンズ裏側からアプローチする。そのためレンズ全体を固定しているレンズボードを本体から分離する(写真では既に分離している)。



本体からレンズボードの分離

本体からレンズボードを分離する前に、橙矢印で示したCdSから繋がる2本の赤いビニル線のハンダ付けを外しておく。



写真ではレンズ前群などが外れていないが、気にしないこと。

本体前面の革を剥がす。小さなヘラや、マイナスドライバーのように平たく加工した箸を使い、無水エタノールで接着剤を緩めながら少しずつ剥がす。剥がすのは写真の部分のみ。

剥がしたら青矢印のプレートを外して保管しておく。恐らく元はボンドで軽く接着されていたのだろうが、この個体はそのまま外れた。下の方にドライバーをコジ入れる窪みがある。これを外しておかないと、組立時のリンクが確認できない。

赤丸ネジ4つを外せばレンズボードが外れるが、その前にリンクを確認しておく。本体側緑矢印と、レンズ側黄緑矢印がリンクしている。緑矢印は常に下方向に力がかかっており、リンクが外れると一気にパチンと移動する。これはオート時にメーター針の振れ方をレンズ側に伝えるためのもの。



底部でもリンクがあり、黄緑矢印の銀色のレバーはレンズ側のもの。ちなみにチャージレバーで、チャージで写真左方向に移動する。

準備ができたらレンズボードを外す。



外したところ。



レンズボードを裏返した。再度リンクを確認する。本体側赤丸が、レンズ側赤丸に噛み合う。レリーズボタンと連動しており、下に押されるとシャッターが切れる。

レンズ側橙丸は底部から出ていたチャージレバー。矢印方向でチャージする。赤丸と合わせて、レンズ側だけでチャージとレリーズができるので、試してみるとよい。

レンズ側緑矢印は距離伝達金具で、フォーカシングでレンズと一緒に前後し、本体側緑矢印を押す。これで本体距離計にフォーカシングを伝える。

本体側黄色丸は赤丸と同じくレリーズボタンと連動しており、レンズ側黄色丸のグレーのレバーを下に押し下げる。こちらはレリーズではなく、オート時にメーターの振れ方をシャッターに伝える部品の一つ。

レンズボード裏側は後群レンズから金属製の遮光カバーがある。手で触ると左右にグラグラしており、完全には固定されていない。その4辺に劣化したモルトプレーン。ボディ側にはボロボロになったモルトプレーンが筒状に立っており、内部が粉だらけになっていた。

この遮光カバーはフォーカシングでレンズと一緒に前後する。モルトプレーンは厚み1mm。最初はモルトプレーンの役割が分からなかったが、おそらく遮光用だろう。レンズ側遮光筒とボディ側遮光筒との間には隙間があり、完全には遮光されていない。隙間は無限遠で約3mm、最短で約5.5mm。



一旦モルトプレーン無しで修理完了とし、しばらくカメラを使用して問題が発生したことはなかった。しかしファインダーに強い光が入ると光漏れが発生する可能性があるので、思い直してモルトプレーンを取り付けた。元の状態がわからないので、とりあえずはレンズ側遮光筒に1.5mm厚のモルトプレーンを5mm幅で切り出して筒状に接着した。オリジナルは1mm厚だが、糊なしのものが手元になかった。

最短側では問題ないが、無限側ではモルトプレーンがボディ側に押し付けられて曲がるため、距離環の操作に抵抗を感じる。やはりオリジナルの通り1mm厚が良いのだろう。使いづらいほどではないので、このままにする。



レンズボートからレンズの分離

丸印のネジ2つを外して距離伝達金具を外す。



上下逆さにして、下側の緩みドメされているセットネジを緩める。



遮光カバーを外した。よく見ると上側の真ん中にもセットネジがあった。こちらはネジ頭のスリ割が完全に崩壊していた。

遮光カバーは上下2点のみで固定しているらしい。左右に遊びがあるのはこのため。なぜこのような構造になっているのか分からない。試しに下側のセットネジを強めに締めてから本体に組み込んでみたら、フォーカスリングの動きが極端に重くなった。この遊びには意味があるようだ。



先細プライヤーでセットネジを外し、スリ割りを新たに作成した。タミヤ『精密ノコギリⅢ』を使用した。0.15mm幅と細すぎるので、ノコギリを左右に傾けて溝を広げながらカットした。



遮光カバーと後群レンズの間に、透明プラスチックのスペーサーがある。わかりにくいが、赤点線で囲った部分。これを外しておく。



外したスペーサー。遮光カバーの錆なのか、接着剤なのかよくわからない汚れがこびりついている。



矢印の外側のカニ目を回して後群レンズを外す。



外したところ。ここから、レンズボードからレンズを分離する作業に入る。その前に距離リングを無限遠にしてテープなどで固定しておくとよい。レンズをレンズボードから分離する際に幾つかの部品が一緒に外れるが、距離リングの状態を覚えておかないと組み込みがややこしくなる。

赤いビニル線はレンズ側の直進キーのところで引っかかっており、レンズ側に引き抜くことになるので、水色丸のねじを外して押さえから線を外しておく。

橙矢印のオート連絡バーを外す。これはオート時にメーターの振れの大きさをレンズ側に伝える役割。橙丸のところでレンズから出ているピンに嵌っており、黄矢印の黒い部品によって常に上に押し上げられている。なので、黒い部品を少し下に下げ、ピンから引き抜けばよい。

準備ができたら、赤矢印の黒いカニ目リングを外す。固かったがCRCを付けて10分で外れた。これでレンズがレンズボードから外れる。

このまま外すと部品の脱落が多いので、外す際はレンズボード側を下、レンズ側を上にする。

ここでミスがあった。黒いカニ目リングを外すのに緑矢印の部品(オート連絡バーのガイドレール)が邪魔だと思って緑丸のネジを外したところ、このネジが貫通ネジで、レンズ側で止まっていた部品が脱落した。ヘリコイドまで分解するなら別だが、そうでない場合はこのネジは外さず緩めるだけにして、緑矢印の部品を回して避けた方が良いようだ。



緑丸の黒い金具が脱落した部品。



前側からシャッターユニットまで分解してから判明したのだが、ヘリコイドの写真の位置に付ける部品らしい。役割はよく分からない。



話は戻って、レンズとレンズボードを分離した。矢印で示している、レンズボード側のヘリコイドの上に乗っているリング状の部品は固定されておらず、そのまま外れる。3つの部品が重なっているので、角度と重なりを記録する。

丸印の部分で金色のスペーサーの一部が内ヘリコイドの切り欠きと噛み合っているのを確認しておく。


部品を外して順番に並べた。例によって写真ではレンズ側の状態が違うが気にしないでほしい。組み込み際はヘリコイドに①~③の順に置く。

①はチャージ連携用、③はレリーズ連携用のリングで、それぞれレンズ側のシャッターユニットとリンクする。

ヘリコイドにはドーナツ状の白いビニール布のようなものがはめ込まれている。恐らくヘリコイドからの油の漏れ出しを軽減するためのものだろう。



写真は、組み込み時のレリーズ連携リングとレンズ側の位置関係を示しすため、レリーズ連携リングを仮にレンズ側の裏に置いている。

レンズ側裏には丸印の位置にネジが4つあり、レリーズ連携リングはそれを避けるための窪みが付けられている。更にこのネジはヘリコイド側の丸印の切り欠きとも一致する必要がある。

この両方が一致しないと、ネジとヘリコイドでリングを挟んで踏んでしまうことになる。この場合、組み込んだ際に、レリーズ連携リングが動かなくなる。

黄緑丸のレンズ側の直進キーは、ヘリコイド側黄緑丸の直進キーレールに差し込む。ヘリコイド側に通すビニル線は、緑矢印の直進キーレールの横の隙間に通す。



組み込み時に合わせるべき部分はまだある。

写真では見えにくいが、赤矢印はレリーズ連携リングの一部(リングから1回だけ直角に曲がっている方)。リングを動かした際、この部分がレンズ側の赤丸のレリーズレバーを押せる必要がある。

青矢印はチャージ連携リングの一部(先が二股の方)。これが青丸のチャージレバーを二股で挟み込む必要がある。青丸はL字型のプレートで、写真奥の方に曲がっている。

以上全てを合わせながら組み込む。嵌ったら、全体をひっくり返してレンズ側を下にして机の上に置き、レンズボードの裏側から黒いカニ目リングを締め込む。

リンク場所が多いため組み込みはかなり難しく、何度もやり直す羽目になった。特にレンズを嵌める際にレリーズ連携リングに指が当たって動かしてしまい、やり直しになることが多かった。実際の製造現場でこんな作業を行ったのだろうか。しかし、これ以外のうまい方法は思いつかなかった。組み込んだらチャージとレリーズ、絞りや速度の変更ができるかどうかチェックしておいたほうがいいだろう。



組み込んだ直後は、黄緑丸の黒い部品にバネの力がかかっているせいで、写真のような位置関係になるだろう。正しくは、黄緑丸の部品は赤丸のピンの下側に来る。

修正するには、緑丸のネジを少し緩め、黒い部品を浮かしながらピンの下側に移動すれば良い。



シャッターユニットまでの分解

更にレンズ側を分解する。緑丸、黄緑丸のネジ3つを外す。左上の緑丸だけ小さな皿ネジ。

しかし写真の銀色のシャッターカバーはサイドの緑矢印のシンクロ接点が邪魔で外れない。サイドの「SEIKOSHA-LA」の銘板が引っかかっているのが原因。



SEIKOSHA銘板はサイドのネジ2つで外れる。すると銘板とともにシャッターカバーが外せる。



外したところ。レンズ側赤丸の、銀の円盤(速度設定ディスク)上の小さい穴が並んでいるところに、古くなった黒いグリスがあるので拭き取っておく。組み込み時にはグリスを軽く塗っておく。この円盤は乗っているだけで固定されていない。

この穴は速度リングのクリック感を出すためのもの。外したシャッターカバーの裏の赤丸に鋼球が組み込まれている。

速度設定ディスクはマニュアル時の速度をコントロールする役割。写真ではビニル線が邪魔で見えないが、水色丸にシャッターからピンが出ており、これがディスクの白線のカムで動かされ、速度が変わる。ディスクは黄緑丸のレバーが速度リングに噛み合って回転する。

先程から「レンズ側」と書いているが、既にレンズはなくシャッター機構のみになっている。なので「シャッターユニット側」とした方がいいだろう。



ここでセルフスイッチのところに、乗っているだけの部品があるので回収しておく。



外した部品。組み込む際、銀色の方はスイッチに差し込み、金色の方は窪みを下にしてスイッチの上に乗せ、丸印をスイッチに嵌める。不安定なので、カバーを嵌める際にシャッターユニット全体を傾け、スイッチ側が少しだけ上になるようにすればよい。そうすると部品が落下しにくい。

この部品の役割は、オート時のセルフ阻害。セルフはマニュアル時のみの機能なので、オート時に使えなくしている。絞りリングがAの位置になっていると、この部品が絞りを設定するレバーに当たってセルフにならない。



邪魔なので直進キーを外しておく。真ん中の矢印だけ違うネジ。



シャッターユニットの裏側(本体側)から更に分解していく。丸のネジ4つを外す。矢印だけ頭が大きい。



橙矢印の絞り設定リングが外れた。このリングは橙線のカムで、シャッターユニット側橙丸のピンを動かしてマニュアルでの絞りをコントロールする。

水色矢印は写真裏側にレバーが出ており、絞りリングと噛み合う。

更に赤丸のネジを外す。



オート設定リングが外れた。このリングはオート時のシャッター速度と絞りを同時にコントロールする役割。

赤矢印の長いピンは、オート連絡バーが嵌っていたもの。つまりオート連絡バーの動きでこのリングが回転する。

青丸の写真裏側にもピンがあり、これはシャッターユニット側青矢印の穴に差し込まれる。このピンでオート時の速度がコントロールされる。

リング側黄緑矢印は絞り設定用で、シャッタユニット側黄緑丸の黒い金具にかかり、絞りをコントロールする。黄緑丸のバネは外しておく。


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