minolta HI-MATIC 7の修理 - ハーフミラーの修理

←1つ前の記事 次の記事→

↑最初の記事


誤って蒸着を剥がしてしまったハーフミラーだが、外してみると全体がかなり劣化していた。

ハーフミラーは縦16mm、横25.5mm、厚さ1.56mm。ネットで調べたところハーフミラーは通販していて、カメラ用の標準的なものは透過率30%で1mm厚。しかし5cmx5cmで3,500円とかなり高額。500円のジャンクカメラにかける費用とは思えなかったので、簡易的に車のウィンドウフィルムを貼ることにした。ネットによるとかなりメジャーな方法で、性能はハーフミラーには劣るが、大まかにフォーカスを合わせる分には問題ないらしい。(2017/10/7:アクリルハーフミラーに変更した。)

蒸着は接眼側にあり、これをこすって綺麗に剥がし、赤線で囲った部分に車用のウィンドウフィルムを貼り付ける。左下と右下を切り欠いているのは、ここにミラー固定用のピンが当たるため。

フィルムは色んな種類があるが、とりあえずシルバータイプで透過率35%と15%の2種類を選んだ。

貼り付ける際は上の金具は外した方がやりやすい。金具のどの位置にハーフミラーが接着してあるかをマーキングしてから外すこと。この個体は接着が弱っており、触っているうちに勝手に外れた。エポキシ系と思われるので、溶剤では溶けない。残った接着はヘラなどで剥がす。

フィルムを貼り付ける際は、気泡が入らないようにヘラで押さえながら貼る。僅かでも凹凸があると二重像がぼやけてしまう(フィルムそのものの凹凸はどうしようもないが)。ホコリにも注意。



ハーフミラーを外したファインダー内部を示す。橙色のラインはハーフミラーがあった場所。赤矢印は抑え金具で、ハーフミラーの反射面を緑矢印の2つの固定ピンに押し付ける。これにより、ハーフミラーの厚みがバラバラでも、反射面の位置は一定になる。



ファインダーの二重像は細かく調整できる。

①はハーフミラーによる上下左右調整。調整すると二重像が円を描くように大きく動く。ハーフミラーの交換時は最初にこのネジで大まかに調整するのだろう。調整時、ハーフミラーの固定ネジ2つは緩めておくこと(この固定ネジの締め込み具合でも二重像の位置が変わる)。④はミラーの左右調整。④はトップカバーを付けたままでも、アクセサリシューを外すとアクセスできる位置にある。

②は近距離の左右調整で、①④で無限遠を調整後、最短距離は②で調整する。他のネジと違い、二重像ではなくファインダー像自体が動く。ファインダー対物レンズが近距離でどこまで動くかの制限を調整しているようだ。調整前に③を緩めておき、調整が済んだら③を締め込んで固定する。

⑤は上下の調整。締め込むと二重像が上に移動し、緩めると下に移動する。移動幅はかなり小さい。⑥はミラーの固定ネジ。ミラーの調整前に緩め、調整後に締め込む。⑥は以前にかなりの調整を繰り返したらしく、スリ割がほとんど崩壊していたため、少し削って回せるようにした。

ネジによる調整には限度があるので、ハーフミラーと金具の接着角度で、最初からある程度二重像が合うようにしておく必要がある。

なお、接着後のネジによる調整はどの方向になるのか分からないので、全ての調整ネジを中間位置にしておく。



ハーフミラーを金具に接着する。接着にはコニシの2液混合型の「クイック5」を使った。硬化開始まで5分とちょうどよい。硬化前にファインダーに入れ、赤丸のネジを「軽く」締めて固定する。しっかり締め込むと調整ができなくなるので注意。なお、最初は接着剤に手持ちの「ウルトラ多用途SU」を使ったが、接着が弱く、すぐに剥がれてしまった。

調整は、裏蓋を開けて露光窓にピントグラスを貼り付け、シャッターを開いた時に像が映るようにする。そこにルーペを貼り付け、フォーカスを細かくチェックできるようにする。ピントグラスは透明アクリル板を#2000のサンドペーパーで荒らしたもので十分。#1000でもよいが、#2000には劣る。

シャッターをBで開きっぱなしにし、ピントグラスを見ながら適当な対象物にフォーカスを合わせる。次にファインダーを覗いて、同じ対象物に二重像が一致するようにハーフミラーを指で動かし、接着角度を調整する。赤丸のネジの閉め混み具合でも像が動くので、それも利用する。左右はおおまかでいいが、上下はネジによる調整幅が小さいので、近距離できっちり合わせたほうが良い。概ね合ったらテープでハーフミラーを固定し、硬化を待つ。

硬化後、調整ネジを使って無限遠、最短距離の両方で二重像を合わせれば終わり。赤丸のネジとハーフミラーの調整ネジ(前写真の①)に緩みどめを塗っておくとよい。なおヘリコイドを分解している場合は、ファインダーの調整の前にヘリコイドの無限遠を調整しておくこと。

以上、初めてなので勝手がわからなかったが、一応二重像が復活した。フィルムは透過率35%と15%の両方で試した。35%はファインダー像が明るく見やすいが、二重像が薄い。15%では逆にファインダー像が暗く見づらいが、二重像はハッキリしている。どちらもフォーカスの合わせやすさに差は感じなかったが、今回は後で試した15%を採用した。単に35%に戻すのが面倒だっただけで、15%の方が良いわけではない。

ウィンドウフィルムの最大の欠点は、二重像が若干ぼやけていることだろう。フィルムの表面に微細な凹凸があるためだと思われる。ファインダーを覗いていて、あまり気持ちのよいものではない。実用上は問題ないだろうが、あくまで応急処置的な手法だと感じた。やはりまともに修理するならハーフミラーを使うべきだろう。


(2017年10月7日追記)

アクリルハーフミラーの切り売りをしている『アクリ屋ドットコム』というサイトを見つけた。ガラス製のハーフミラーに比べると安価で、現時点で100mm×100mmで848円(税込)だった。厚さは2mm、透過率は30%のみ。厚さがオリジナルの1.56mmと比べると0.44mmも厚いのがネック。

試しに購入してみると、ファインダーになんとかギリギリで収まった。ウィンドウフィルムと同じ手順で設置してみると、ガラス製ハーフミラーと比べて遜色ないクリアさ、鮮明さで二重像が復活した。ハーフミラーはアクリル製で十分と思われる。なお、接着剤はコニシの「ウルトラ多用途SU」を使用した。

簡単に加工できるので、仮に他のカメラで厚みが合わない場合でも、端をヤスリで削ってしまえば大方は使えるのではないだろうか。

欠点は表面が傷つきやすいこと。また、少し力をかけるだけで曲がること。試しに調整ピンで極端な調整をしてみると、ハーフミラーに無理な力がかかって歪んでしまい、二重像も歪むのが確認できた。



以下は参考までにファインダーユニットの構造を示す。

写真は先程のミラーの⑤上下像調整ネジと⑥ミラー固定ネジを外したところ。⑤はネジ頭の方が太くなった特殊なネジ。⑥は実際はネジではなくナットだった。



調整ネジを外したミラー台座。先程の特殊ネジは⑤ネジ穴に入る。ネジを締め込むと、ネジ頭側の太くなった部分で台座を押し、台座の切れ込みが広がってミラーが傾く。

⑥はミラー固定ナットが嵌まるネジの先端。下側から六角ネジが差し込まれている。



ファインダーユニットを本体から分離する場合は丸印のネジ3つで外せる。真ん中は段ネジ。



ファインダーユニットを外して裏返したところ。①はミラー固定ネジの頭側。六角が(1A)で固定されている。②はミラーの左右調整の回転軸。③はレンズユニットの距離計伝達部品に押されて移動する。④はその動きをブライトフレームに伝えるピン。ブライトフレームは上下方向に動いてパララックス補正する。

⑤は対物レンズで、③の動きで同じく移動する。フォーカシングの際は⑤が動き、ミラーは動かないので、動いている二重像はファインダーから直接覗いている実像の方のようだ。ブライトフレームのパララックス補正は上下方向にしか動かないので、⑤の左右の動きは左右方向のパララックス補正も兼ねていると思われる。


←1つ前の記事 次の記事→

↑最初の記事