Rolleiflex SL26の修理 - ボディの修理

目次:

戻る



トップカバーの分解


まずは主な故障である動作のスタックの原因を調べたい。

分解を始める前にレンズ前側を外して保管しておく。



トップカバー側面のネジx2外す。



外したネジには変わった偏芯ワッシャーが入っていた。初めて見たが、緩みドメの効果があるのだろうか。



巻き上げレバーの革を剥がすとネジが現れる。



ネジを外すと巻き上げレバーが外れる。



接眼部のネジを外す。



接眼部が外れる。これでトップカバーが外れる。



そのままトップカバーを外すと(1)レリーズボタンが抜け落ちるので、ボタンを掴みながらトップカバーを外す。

トップカバーは真上ではなく、前側に傾けていくと外れる。

(2)は巻き上げレバー軸。ここに巻き上げレバーを仮止めしておくと動作チェックが用意になる。



ビニル線は(1)はナットで止まっているので外す。(2)はハンダを外す。

(3)はプリズム押さえ用のスポンジ。材質は一般的なモルトプレーンのものと違って硬い。弾力性がなくなり、ベタベタしているので交換が必要。



トップカバー内。

(1)はレリーズボタンが押すレリーズプレート。正常ならここを押すとレリーズする。

(2)はレリーズボタンの妨害。チャージ完了までレリーズプレートが押し込まれるのを妨害する。矢印方向に動かすと妨害が解ける。(2a)を矢印方向に動かしても妨害が解ける。

プリズムは(A),(B)の2箇所にセロテープが貼ってある。以前の修理者によるものと思われる。(A)は抑え金具とバネのアタリ防止用だろう。(B)は意味がわからない。トップカバーのアタリ防止にしては場所がおかしい。

(3)のバネのかかりを外して押さえ金具外し、プリズムを外す。バネも外しておく。



プリズムは底面が大きく凸になっている変わったもの。

底から覗くと、銀蒸着が劣化しているのが見える。プリズムをファインダー側から覗いたところ、視界はかなり暗く、重症だと思われる。

セロテープが貼ってある場所が特に傷んでおり、もしかするとこれ以上の蒸着剥がれを防ぐためのテープなのかもしれない。

プリズムは後で対処することとし、先を進める。



接眼レンズは清掃のため外しておく。ネジx2で外れる。



ネジは左側だけワッシャーが入っていた。反対側は以前の修理で紛失したのだろう。



接眼レンズはベージュの硬いスポンジで本体に接着されていた。これが引っ張った際に破断してしまった。ここは1mm厚のフェルトで代用することにする。

(1)はメータユニットで、(2)CdSが接眼レンズに向かって付いている。ファインダーに入る光を計測している模様。



メーターは直接電圧をかけたが反応しなかったため、故障と思われる。

メーターはそのままにしておいてもいいが、作業の邪魔になるので外しておく。ネジx3と矢印の辺りのバネの掛かりを外すと外れる。



バネの掛かり位置の拡大写真。

矢印の部品は裏蓋扉とリンクしている。扉を閉めるとこれが動いてフィルムカートリッジの切り欠きにはまり、ISO感度を読み取る。



メーターを外したところ。丸印同士はリンクしている。これはレンズユニットに刺さるピンへと繋がっており、レンズの絞りリング、速度リングに合わせて動く。2つのリングの状態を読み取ってメーター針の位置を補正する役割。

メーターは故障しているので、このあたりのメカニズムは詳しく調べていない。



メーター近くの部品のリンクが写真のようになっていた。(1)フォーク型の部品と(2)ピンが噛み合っていないようにみえる。



根拠はないが、とりあえず写真のように変更しておいた。どのみちメーターは動かないので関係ない。



(1)プリズム台と(2)スクリーンを外しておく。

(3)上ギアユニットに引っかかって外れにくい場合は後で(3)を外してからでもよい。



本体を逆さにして外してみると、3つの部品が入っていた。(1)プリズム台、(2)スクリーン、(3)視野枠。



前カバーの分解

次に前カバーを分解していく。カバーの革を剥がす。下地は金属。



今回は革を完全に剥がしたが、ネジの位置だけでも良い。前側のネジの位置は写真の丸印。



前から見て左側側面のネジの位置。

下地は金属だが裏蓋スイッチはプラなので、革を剥がす際の溶剤に注意。



前から見て右側側面のネジの位置。



以上のネジx8を外し、前カバーを外した。

向かって左側のカバーのネジはかなり固く、CRCを付けてしばらく待っても外れなかった。ドライバーをネジに当ててハンマーで軽くコンコン叩き続けてCRCの浸透を促すと、10分ほどしてから外れた。

カバー自体も革の接着剤の一部が隙間に入り込み、本体にくっついていた。エタノールで緩めながら外した。



向かって右側は機能が少ない。矢印のレンズの後ろ側に刺さっているピンはメーターユニットから繋がっている。これが絞りリング、速度リングの動きに合わせて前後に動き、それをメーターに伝えて針を補正する役割らしい。



向かって左側は複雑で、こちらに機能が集約されている。

(1)は裏蓋扉とリンクしており、扉の固定とともに、裏蓋が開いているとレリーズボタンをロックしたり、チャージが完了していると裏蓋を開かなくする役割。

トップカバー側(写真左)の垂直展開しているギアユニット(U)はフィルム巻き上げ関係。

以下、(U)を「上ギアユニット」とする。

前側(写真中央)の水平展開しているギアユニット(F)は、チャージやレンズユニット・ミラーボックスとの連動を担っているようだ。故障原因があるとすればここだろう。

以下、(F)を「前ギアユニット」とする。

部品を色々つついてみると、(2)のホイール型部品とミラーが連動しているようにみえる。前ギアユニットはレンズユニットの下になっている部分が見えないので、レンズユニットを外すことにする。



レンズユニットの分離

フィルム室を開けるとレンズユニットを固定しているネジx3が見えるので外す。

写真の状態は故障でミラーアップしているが、正常な個体ではミラーと(1)遮光板が下りているので、指でミラーごと(1)遮光板を押し上げるか、バルブにして上げておけばいいだろう。

(2)遮光カバーが邪魔でネジが外しにくい場合は(2)を外してもよい(別項参照)。外すとレリーズ動作が完了しなくなるので、動作テストの際は(2)遮光カバーを取り付けること。




ネジを外すとレンズユニットの取り付けが緩み、同時に「パチッ」と音がしてレンズシャッターが閉じた。ボディとのリンクが外れたらしい。

次にレンズユニットから出ているアームのeリング(丸印)を外す。



レンズユニットが外れた。レンズユニットは上下に裏返している。

ボディ側の(A)レンズ連絡ギアは乗っているだけなので注意。(A)の角度は決まっているので記録しておく。組立時にこの角度を間違えると動作しなくなる。しかしその角度は微妙なものではなく、動作メカニズムがわかっていれば調整は容易。

レンズとボディとでリンクしている部分は同じ記号で示している。



不具合の修理

前ギアユニットは古いグリスで全体が汚れている。グリスは接着剤のようになってしまっており、いくつか部品をつついてみたが動きが悪い。

(1)ホイールは右回転方向に強い力がかかっていて、(3)で係止されている。

ピンセットで(3)を押して避けると、(1)が僅かに回ってすぐに(2a)で係止された。

(2a)はつついても動かない。よく見ると、(2a)は反対側の(2b)が(4)で係止されている。

(4)を少し上に上げると(2b)の係止が外れて(2a)も動き、(1)が一気に右回りに半回転してミラーと遮光板が下り、レリーズ動作が完了した。

やはりこの辺りに不具合があるようだ。



邪魔なのでシンクロ関係の金色の金属板(2)を外しておく。丸印の箇所で軽く接着されている。

既に説明したが、(1)レンズ連絡ギアは乗っているだけなので外しておく。



不良原因を探っていろいろ見ていると、矢印のバネが奇妙な位置にあるのに気づいた。このバネはミラーボックスの外側にかかっており、ほとんど意味をなしていない。

なお、写真では丸印辺りで複数の部品が外れているが、これは部品を避けて奥を調べていたためで、ここでは関係ない。



バネのかかり位置を丸印のように修正した。おそらくこれが正しい。なにかの拍子に外れたのだろう。

バネがかかっている部品は、最初に前カバーを開けた際、ホイールを係止していたものだった。この部品は、正常ならレリーズ時にホイールに蹴られ、レンズ側にレリーズ開始を伝える役割。

レンズユニットを取り付けてレリーズしてみたが、全体の動きが悪く、ホイールが止まってしまった。しかしホイールを押して回していくとレリーズは完了したので、初期状態のようにスタックしているのではなく、古いグリスで動きが鈍っているようだ。

結局のところ、スタックの原因がバネ外れだったのかどうかは分からない。どのようなメカニズムでこの不具合が起こるのかは理解できなかった。

しかし正常時の動きはだいたい把握できた。概ね以下の通り。

  1. 初期状態でホイールがレンズのアームを押し、シャッターと絞りを強制開放。
  2. レリーズ開始でホイールが回転を始め、ミラーと遮光板が上がる。
  3. シャッターが閉じ、絞りは設定値まで絞られる。
  4. ホイールが半回転で停止。レンズ側のレリーズ開始。シャッターが開き、設定時間後に閉じる。
  5. レンズ側のレリーズ終了でホイールが回転を再開。ミラーと遮光板が下がる。
  6. シャッターと絞りが強制開放。初期状態に戻る。

レリーズ1回の動作で、開いているシャッターが閉じ、また開いて閉じる。シャッターと絞りはレンズ側だけで完結せず、ボディ側から制御するメカニズムも必要になっている。無駄な動きが多いように感じるが、レンズシャッター式一眼レフはこの構造が普通なのだろうか。



上ギアユニットの分離

前ギアユニットのグリスを落とすため、前ギアユニットをボディから分離したい。

その前に、前ギアユニットを外すのに邪魔になりそうなので、上ギアユニットを外してみる。

ネジx4を外す。左上のネジは部品の穴の奥に見えている。ここだけ短いネジ。これで上ギアユニットが外れる。



(1)はフィルム室内にあるパーフォレーション検出ピンにリンクしているプレート。このリンクが引っかかって外れにくい場合は、矢印のバネの掛かりを外すとよい。



上ギアユニットを外した。左右に裏返している。

(1)バネ、(2)金色の巻き上げ軸、(3)金色の巻き上げ連絡ギア、いずれも乗っているだけなので外しておく。



(2)巻き上げ軸を外すとその下に(4)黒いギアがある。これも外しておく。(4)は先程の(3)巻き上げ連絡ギアとリンクして回転する。



前ギアユニットの分離

前ギアユニットを分離する。写真には上ギアユニットがあるが、外れていると思って欲しい。

まずネジx4を外す。前ギアユニット盤の裏には、上2つは長い銀色のスペーサー。左下は薄い金色のスペーサーがあった。右下にはスペーサーがなかった。

右下のネジは、すぐ右上の金色の部品が当たって外しにくい。ネジを緩めながら角度を修正し、うまく外すしかない。



ネジを外すと前ギアユニット全体がグラついたが、ホイールの辺りが引っかかって外れない。

ホイールは外すべきではなさそうな位置にあるが、他に方法が思いつかなかったのでホイールを外してみる。ホイールは丸印のネジx1で外れる。

すると、ほとんど外れそうになったが、前ギアユニット盤の裏側で幾つかの部品が引っかかって外れにくい。

写真ではわかりにくいが、ユニット盤裏側の矢印の太いピンにリンクした2箇所を外すとよい。

あとは前ギアユニットを前側に浮かしながら、ボディの前下方向に揺らしながら引き抜く。



前ギアユニットを外して左右に裏返した。先ほど引っかかっていたのは丸同士、四角同士の部分。

外したユニットはベンジンで洗浄し、乾燥後、擦れる部分にはウレアグリスを塗った。ボディ側の(1)白いカムはプラスチックなので、ここだけシリコングリスにしておいた。

するとユニット全体がスムーズに動作するようになった。

この後、全体を組み立てると、正常にチャージとレリーズが出来るようになった。



組み立てには少しコツが必要。

まずはホイール関係の部品を前側から順番に示す。表側に(1)ネジ、(2)ホイール、裏側に(3)カム、(4)スペーサー、(5)ナット。写真では前ギアユニットは裏側になっている。



前ギアユニットをボディから分離する際、ホイール部分が引っかかっていたので先にホイールを外したが、実際はボディと固定されていなかった。丸印同士、カムの裏側とゼンマイの先端が噛み合って外れにくかっただけ。

だからといって写真のように前ギアユニットに先にホイール関係の部品を取り付けても、カムとゼンマイを噛み合わせるのは難しい。



なので、ホイールは後で取り付けることとし、先にボディにホイール関係の部品を置いていく。

まずナットを置く。



その上に金色のスペーサーを写真のように置く。穴からゼンマイの先端が見えている。



そこに上からカムを差し込めば、そのままカムがゼンマイの先端と噛み合う。



その上から前ギアユニットを差し込む。写真の角度で差し込むとよい。スペーサーを忘れないように。



そのままではカムがユニット裏側のミラー制御アームと遮光板制御アームに当たって嵌まらない。

前ギアユニットを浮かした状態で保持し、ユニットの裏から右下に出ているフォーク型の部品(アームの先端)の位置を、右側のピン(ミラー制御ピン、遮光板制御ピン)とリンクする位置に調整する。

するとカムとアームが当たらなくなるので、ピンとフォークをリンクさせながらユニットをボディにはめていく。



カムの部分はハマるが、ユニットを分離する際に引っかかったのと同じ箇所が引っかかる。丸印の部品を矢印方向に避けながらうまく嵌め込む。

はまったらネジで仮止めする。



ユニット全体がボディにはまったら、ホイールをはめる。

そのままだとホイールで丸印の係止部品を踏んでしまうので、避けながら嵌め込む。

嵌めたらネジを入れて締めたいが、このままだとネジがナットに届かず空回りする。

ボディをひっくり返して前側を下にすると、ナットがネジ側に落ちてくるので、この状態でネジを回すとナットと噛み合って締めることができる。

ホイールのネジを締めたら、仮止めしていたユニットの4つのネジを締める。



最後にホイールを少し回して丸印のとろこで係止状態にすれば完了。



組立時の注意

既に述べたが、写真のように遮光カバーを外した状態ではレリーズが完了しない。遮光板が遮光カバーに当たらず、ミラーダウン時に後ろに行き過ぎるため。すると前ギアユニットが遮光板操作ピンを押せなくなり、そこで動作が止まってしまう。

組立時はステップごとにレリーズテストを行うので、遮光カバーを外している場合は先に取り付けておくこと。



レンズユニットを取り付ける際は絞りを絞り込み、丸印のバネを縮めておく。絞りを開くとバネが伸び、取付時にボディと干渉してしまう。



レンズユニットを取り付ける際、ボディ側(写真左)の(1)レンズ連絡ギアを写真のような角度にする。

ここにレンズ裏側(写真右の青囲み)の(L1)開閉軸をはめるが、(L1)のピンが当たってはまりにくいことがある。

その時は(2)チャージアームを上に押し、少しだけ(1)を右方向に回した状態で取り付けるとはまりやすい。



レンズユニットをはめたらフィルム室からネジを締める必要がある。レンズを手で抑えておくのは難しいので、一旦テープで止めてしまえばよい。

ネジ穴にアクセスするにはミラーと遮光板を上げる必要があるが、それには一旦ホイールの係止を逃してホイールを右方向に半回転回して写真のような状態にし、ミラーと遮光板を上げてしまえばよい。チャージしていないのでホイールは手で回せる。

係止を逃がすには、ピンセントで係止部品を押したり、レリーズ妨害を外してレリーズプレートを押し込めばよいだろう。

ネジを締めたらホイールを元に戻す前に、丸印同士をeリングで固定する。

その後、ホイールを初期位置に戻せばよいだろう。



上ギアユニットの丸印の位置のネジを取り外している場合は、組み立て前に差し込んでおく。

上ギアユニットをボディに嵌めてしまうと、銀色のレリーズ妨害が写真の位置まで動かず、ネジが入れられない。



上ギアユニットの(2)と、ボディ側に乗っている(1)巻き上げ連絡ギアの丸印のリンクがハマりにくい。

(1)をつついて少しずつ回すとはまりやすい。