Rolleiflex SL26の修理 - レンズユニットの修理

目次:

戻る



レンズユニット背面の機能

レンズは後玉の内側がカビだらけで白く汚れている。絞り羽根は動くが、動きが少しだけ遅い。どちらも洗浄が必要なため、分解していく。

まずはユニット背面の機能を確認しておく。『前ギアユニットとレンズユニット裏側のメカニズム』と重複する部分があるが、部品番号は一貫していない。

(1)はメーターから繋がるピンが差し込まれる穴。絞りリングと速度リングの後ろ側には傾斜がつけられており、その傾斜にピンの先端が当たっている。ピンは2つのリングの動きに合わせて前後し、メーター針の位置を補正する。メーターが故障しているので動作原理は詳しくは調べていないが、2つのリングの間にある、リングの一部のような小さなパーツが重要らしい。

(2)は絞り操作レバー。長いバネがかけられ、絞り込む方向に力がかかっている。(A)に動かすと絞込、(B)は開放。

(4)はシャッター羽根の強制開放レバー。これを矢印に押すとシャッターが強制的に開く。

(3)はボディのホイールから操作される強制開放アーム。レリーズ前は(A)方向に押されており 、(3)が(2)と(4)を押してシャッター羽根と絞り羽根を全開にする。これはレンズからファインダーに像を送るためのもの。レリーズ動作中は(B)方向に移動して強制開放を解除する。

(6)は(4)の妨害で、(5)カムに操作される。写真は妨害している状態。(5)は(3)と一緒に回るカム。強制開放時、(6)は(5)に押されて矢印方向に移動しており、(4)への妨害は働かない。(3)の強制開放が解けると(5)が(3)と一緒に回って(6)が移動して、(4)を妨害するようになる。レリーズ中に(4)が操作されないようにする仕組みだと思うが、(3)以外で(4)を押す部品はないので、なぜ妨害が必要なのか分からない。

(8)はシャッター開閉軸。ボディ側のレンズ連絡ギアから回転が伝わる。これを右回りに半回転するとレンズ側がチャージされる。チャージ後、(8)レンズ内部で係止される。

(7)はレリーズスイッチ。矢印方向でレリーズ開始。



前側(マウント側)からの分解

分解を始める。マウント部から分解していく。ネジx3でマウント台座が外れる。



矢印の黒い化粧リングがそのまま外れる。



矢印のローレットリングが外れる。



ローレットリングと(1)速度設定リングは丸印で噛み合っていた。

次に矢印のCリングを外す。



次に(1)速度設定リングを外すが、丸印のところに鋼球が見えているので注意。



スローガバナーの分離

速度設定リングを外すとシャッターユニットが露出した。

矢印のクリック用の鋼球を外して保管。

ここで外すところが見当たらなくなった。一応、(1)スローガバナーを外してみる。ネジx2で外れる。外すとスローガバナーの調整が必須になるので注意。



外してみたが、シャッターユニットの台座は背面側からネジで固定されているのが見える。

前からの分解はここまでらしい。



スローガバナーを裏返した。ベンジンに漬けて洗浄しようと思ったが、よく見ると矢印のアンクルがプラスチックになっている。

アンクルだけ分離できないか調べるため、(1)のネジを外してみる。(2)はスローガバナー自体をシャッターユニットに固定していたネジ。この部分は既にスローガバナーのカバーが外れているので注意。



カバーを外すと、矢印のアンクルだけ抜いて分離できるようになっていた。アンクルはエタノールで、その他はベンジンで洗浄した。

カバー取り付け時、(1)のバネ2つは(2)にかかるのだが、カバー取り付け後ではバネをかけるのが難しい。なので先に紐で引っ張って、紐を(3)の部分に結びつけておき、カバー取り付け後に紐を切って(2)にバネをかけるとよい。

(4)のバネは(5)にかけるが、カバー取り付け後でよい。

後は軸にラウナ5%希釈液を軽く注油。



後のレリーズテスト時、スローガバナーから「キュッ」という異音が発生した。よく見てみると、ガンギ車は底カバーに固定されたポールの上に軸が乗っている(丸印)。なので注油はポールとガンギ車の間に行う必要がある。ここに注油すると異音はなくなった。



スローガバナーの取付時、(1)を(2)開閉軸とリンクさせる必要があるが、そのまま取り付けると写真の状態になってリンクしていない。

まず写真の状態で軽くネジをとめ、(1)を矢印方向に押してリンクさせてからネジを締め込む。



(1)と(2)がリンクするとこのような状態になる。

また、(3a)アンクル操作レバーの底側がシャッターユニットとリンクしている必要がある。(3a)を矢印に動かすとリンクできる。



リンク位置を示しておく。スローを再度外して裏返したところ。(3b)は(3a)の底側。(3b)が丸印にくるようにする。



最後にスローガバナーの速度調整を行う。丸印のネジに取り付けシロがあるので、これでスローガバナーの取付位置を調整する。

(A)方向で速度が早く、(B)方向で遅くなる。1/15で調整すると良いだろう。調整は微妙で、少し位置を変えるだけで大幅に秒時が変わるので注意。



背面からの分解

レンズ後玉の清掃やシャッター羽根、絞り羽根へのアクセスは、背面からの分解が必要らしい。
まずは(3)レバーを外す。矢印のバネのかかりを外すだけで外れる。



矢印のCリングを外す。前側の速度設定リングのものより一回り大きい。



矢印のカムを外す。外れにくい場合は先に矢印のeリングを外しておいてもよい。



ネジ3外す。左上のネジはバネのかかりを兼ねているので、事前にバネを外しておく。

次に(8)開閉軸のピンを矢印の方向に打ち抜く。このピンに方向性はないと思うが、一応先端に赤い印をつけておいた。次に(8)開閉軸のeリングを外す。

これでレンズユニットの背面カバーが外れる。



次に矢印の絞りリングが外れる。



次に矢印の速度リングを外すが、赤線で囲ったところにリングの一部のような部品があるので注意。恐らくメーター補正ピン関係の部品。



速度リングを外したところ。



ネジx4外すとシャッターユニットと羽根ユニットが分離する。左下のネジの横に「×」マークがあるが、これは背面カバーを付けていてもこのネジだけ見えているため、以前の修理者が記したのだろう。

シャッター羽根はこの時点で固定されなくなるので、事前に羽根の重なり方を前後から記録しておく。



そのままでは分離しなかったので、一旦ひっくり返して前側を上にし、シャッターユニットを揺らしながら引っ張り上げると分離できた。

左側にシャッター羽根が残っている。3枚で、すべて同じ形。汚れは確認できないが、一応ベンジンで洗浄しておく。



シャッター羽根を外して絞り羽根を開けると、後玉内側が露出した。水滴様にカビが発生している。



シャッターユニット裏側。金色のシャッター操作リングが見える。リングとシャッターユニット台座の間にはツルツルしたプラスチックのシート(A)が挟まっている。滑りを良くするためのものだろう。

金色のシャッター操作リングは矢印の方向でシャッター羽根が開く。(7)はレンズユニットの後ろから出ていたシャッターの強制開放レバー。

こちら側はカシメられており、これ以上は分解できない模様。



次に絞り羽根も分離していく。金色のリングを外す。



ネジx2外すと黒い絞り羽根押さえリングが外れる。

事前に前後から絞り羽根の重なり方を記録しておくこと。



絞り羽根が露出した。6枚で、すべて同じ形。リングの穴と羽根のダボは丸同士が噛み合う。

羽根を外してベンジンで洗浄する。



押さえリングのほうがひどく汚れていた。これもベンジンに漬ける。

洗浄後は絞り羽根がスムーズに動くようになった。



念のため絞り操作リングも外して清掃しておく。




レンズの周りは青いシーリングのようなもので覆われている。よく分からないが、カシメだろうか。
レンズ単体では外せないので、このまま清掃した。カビはハイターでおおむね落ちた。



一見、綺麗になったが、光のあてかたによっては斑点状のムラが見える。コーティングが侵食されたらしい。実用上は問題ないだろう。



羽根の組み立て

絞り羽根を組み立てる。レンズが取り出せないので、羽根がレンズに当たらない絞り開放状態で組み立てることにした。絞り操作リングを背面側からテープで固定すると羽根を置きやすいだろう。

後で思いついたが、レンズをマスキングテープで保護し、絞り気味の状態で組み立てればよかった。



1枚目は12時の方向に置いた。羽根の下側のダボを操作リングの溝にはめる。その上にある赤と青のものは羽根固定用のスポンジ。

その上から反時計回りに2枚目以降の羽根を上から重ねて置いていく。



最後の6枚目は5枚目の上に重ねるが、その先端は1枚目の下に潜り込ませる必要がある。押さえのスポンジは、その際に1枚目が動かないようにするためのもの。

これはYOUTUBEの「DAITO CAMERA - OLYMPUS35 シャッター組んで巻き上げ部」で知った方法。このYOUTUBEチャンネルでは様々なカメラを分解しており、勉強になる。内容は高度だが、作成者は修理師ではなく、趣味でやっている方だというから驚きだ。




すべての羽根を置いたら、押さえリングの穴に羽根のダボがはまハマるよう、羽の位置や角度を調整する。絞り開放では押さえリングを置いてしまうと羽根が見えなくなるので、置いた状態では調整できない。

これが難しく、1時間程度かかってしまった。やはり絞り気味で組み立てたほうが良いだろう。

押さえリングを置いたらネジで固定しておく。



次にシャッター羽根を組み立てる。こちらは調整がないので簡単。1枚目を置く。



時計回りに2枚目を重ねて置く。



3枚目を重ねて置く。



金色のリングを置く。

あとは絞りユニットをはめてネジで止めれば完了。



組立時の注意

特に難しい部分はないが、速度設定リングはバルブ位置ではめるとよい。他の速度では(A)のバルブレバーを避ける必要があるが、バルブならそのままリングをはめればよい。

ただし(B)アンクル操作レバーは踏んでしまうので、矢印方向に避けてはめる必要がある。