旭光学 ASAHI PENTAX SVの修理 -
シャッター幕の張替え準備

←1つ前の記事 次の記事→

↑最初の記事


シャッター幕の張替え準備

2年前に幕を張りなおして問題なく動作していたが、リボンが切れてしまった。

撮影中に切れたのではなく、新しく作ったシャッターテスターの限界を探るため、テンションをどんどん強くして幕速を速めていったところ、先幕のリボンが切れてしまった。通常の使用では2年で切れたりはしないだろう。貼り直しのため再修理する。

前回は他のサイトを参考に簡易的な方法で幕を貼ったが、今回は一般的な方法で行い、記事を改定した(『旧記事』はそのまま置いておくが、内容に間違いがあるので注意)。

幕の張替えを行う場合は、フォーカルプレーンシャッターの基本的な知識と、シャッターテスターが必要になる。フォーカルプレーンシャッターの仕組みは以下の記事で簡単に説明したので、知らない場合は確認してほしい。シャッターテスターがない場合、1000fpsなどの超スロー動画撮影機能があるデジタルカメラで代用できるだろう。

共通の修理方法 - フォーカルプレーンシャッターの仕組み



張り替え作業の前にいくつか確認しておくことがある。

まずは幕竿位置を記録する。

"B" でレリーズプレートを押しっぱなしにして露光中状態にし、左側、後幕竿の位置を記録する。フレームの左5mmくらいの位置にある。正確に記録すること。

右側、先幕竿の位置を確認する。フレームのすぐ右で、上の丸印の切り欠きとの位置関係で覚えておくとよい。位置は厳密でなくていい。

幕に異常があり、事前に正常な幕竿位置がわからない場合は、適当に位置を決めておき、組み立てながら試行錯誤して正しい位置を探るしかない。



底部の部品の位置を記録する。

B9:底部巻上ギアはレリーズ、チャージ共に同じ位置で、ピンB9aがB10:バウンス防止伝達プレートに当たった瞬間の位置。



B1:ミラー制御ギアとB2:ミラー制御鎌形金具のレリーズ位置。B1のピンB1aがB2を動かしている。

ミラーボックスの黒いレバーが写っているのは写真流用の都合上。



チャージ位置ではB1bの裏側にある突起が、B11:スロー槍の下側に来るようにする。

このギアはチャージで左に回る。チャージ完了直前にB1bの突起がB11を押して乗り越え、チャージ完了でちょうどB11の下側に来る(僅かな隙間はある)。



B3:シンクロギアの位置を確認する。レリーズ位置で、爪B3aがB12:バウンス防止レバーと1~2mmの隙間がある程度。ピンB3bはB8シンクロ接点を左から押してショートさせている。



チャージ位置も確認しておく。

底部の記録ができたら、ラチェットを外して巻取側ドラムのテンションを開放しておく。ギアが一気に右に回ってドラムのテンションがゼロになる。



以上で準備ができたので、ドラムから幕を剥がす。

エタノールで接着剤を緩め、プラスチックや木のヘラでドラムを傷つけないよう、少しずつ剥がしていく。ドラムに残った接着剤をきれいに取り除いておく。

前回使った「セメダイン スーパーX」はエタノールにやや耐性があるらしく、ガッチリくっついていて作業に時間がかかってしまった。


←1つ前の記事 次の記事→

↑最初の記事