旭光学 ASAHI PENTAX SVの修理 -
シャッター幕の張替えのための分解

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シャッター幕の張替えのための分解


幕張替えのために更に分解する。

1:ゼンマイユニットを外す。2のピン2aにゼンマイの先端が固定されているので、それを外してからユニット全体を持ち上げる。右回りにゼンマイの強い力がかかっている。

そのまま持ち上げてしまうとゼンマイバネが一気に伸びて外れ、面倒なことになる。手を切ってしまう危険もある。バネが伸びないように側面を押さえながら外し、外したらすぐに粘着テープをゼンマイユニットに巻きつけておくといい。



バネの固定に失敗するとこんな感じになる。こうなってしまったら、面倒だがゼンマイバネをユニットにグルグル巻いていくしかない。



2:ゼンマイ制限を外す。ネジx2(ワッシャーあり)。巻上レバーの操作でゼンマイユニットが回る角度を制限する部品。ゼンマイバネの先端固定も兼ねる。



3:黒い巻上ギアを外す。このギアは歯1つのレベルで位置が決まっている。事前に位置を記録しておく。ここではマーカーでギアと軸に線を書いた。チャージはギアが180度回転して行われるので、正解位置は2パターンある。

位置を間違うと2回巻き上げになるなどの不具合が発生する。その場合はギアの歯を1つずつずらしながらチャージテストを行えばよい。



1:ゼンマイユニットを裏返したところ。1の爪1aが3:巻上ギアの3aとリンクしていた。チャージ操作すると1aが3aを押し、3が左回りに180度回されてチャージする。

チャージすると1はゼンマイバネの力で逆転して元の位置に戻る。1aはラチェットになっており、逆転する際は3aとはリンクせず滑るようになっている。巻上レバーの操作で、行きはフィルムを巻き上げるが、帰りはレバーだけが戻ってフィルムは戻らないのはこの仕組のため。



4:速度指標を外す。側面のセットネジx3。



ワッシャーを外す。



5:速度ダイヤルを外す。白マーカーで印をつけているが、取り付けられる位置が決まっているので必要なかった。写真は "B"。



5:速度ダイヤルを外して裏返したところ。5aの突起が7の切り欠き7aにリンクしていた。このリンクにより5を回すと7も回る。

5に取り付けられている5Bはスロー秒時のカム。6:スロー伝達レバーの先端6aがこのカムに沿って動く。5を取り付ける際は5Bで6aを踏まないように注意。

7は高速秒時のカム。



6:スロー伝達レバーを外す。カニ目ナットx1。

巻上ギアとゼンマイ制限が写っているのは過去の写真を流用しているため、以降も外したはずの部品が写っていることがあるが、気にしないでほしい。



8:速度ノブを外す。貫通ネジx1。"B" では前側にネジの頭が来る。8aで7:高速カムとリンクしている。7は下にバネがあり、8を外すと7が持ち上がる。

8aは下の7の軸の上部と強くこすれる。"B" から他のモードに動かそうとすると重いのは、ここのグリス切れが原因。組立時にモリブデングリスを塗っておく。



7:高速カムを外す。7aで下にある9:先幕チャージギアのピンとリンクしている。このリンクで7とその下にある9が一緒に回転する。



バネとバネ受皿を外す。



10:カウンターリセットレバーを外す。先に矢印のバネのかかりを外しておく。eリングx1。



eリングを外す時はマイナスドライバーで白矢印を押すか、赤矢印にマイナスドライバの先を入れてねじる。はめる時は逆から押せばよい。



小さいeリングは外すときに飛ばして無くしやすい。テープで一部を止めておくと飛ばしにくいし、飛んでも見つけやすい。

それでも飛ばしてなくしてしまうことがある。eリングはホームセンターでは見かけないが、ネジ屋やネット通販で手に入る。高いものではないのでスペアを購入しておくとよい。カメラでよく使われているのは「M1.2」「M1.5」「M2」あたりのようだ。



11:速度ダイヤルクリック金具を外す。ネジx2。



その下の黒いカバーを外す。



12:チャージ完了マークを外す。ナットx1。

この部分は軸のネジ山が潰れかけていたので、組立時は接着ドメにした。



ここで9:先幕チャージギアのレリーズ位置を大まかに記録しておく。9aの位置を記録する。

記録したら13:先幕制限を外す。ネジx1(ワッシャーあり)、カニ目ナットx1。

後で13がない状態で、9をレリーズ位置に取り付ける必要がある。



上下2段の14:チャージ伝達ギアを外す。



15:レリーズプレートを外す。ナットx1、ネジx1。ネジの下のeリングは外さなくて良い。



16:逆空転ギア群を外す。このギア群はこの写真の状態で取り付け位置が決まっている。組立時に説明する。

まずは銀色のプレート16Aを外す。



写真は少しギアが回ってしまっている。ギア16Bを外す。茶色いピン16Cに注意。



茶色いピン16Cを外す。



ギア16Dを外す。



矢印にピンとバネが入っているので取り出しておく。



9:先幕チャージギアを外す。このギアは17:先幕軸ギアとリンクしており、先幕をチャージし、係止するためのもの。



18:先幕ストッパーを外す。ネジx1。



19:後幕チャージギアを外す。これは20:後幕軸ギアとリンクしており、後幕をチャージし、係止するためのもの。



幕の接着の際にレリーズシャフトの21A:レリーズ伝達ピンが邪魔になるので外す。ピン自体がネジになっている。



21:レリーズシャフトを上に引き抜いておく。



幕が貼り付けられているドラムを自由に回転させるため、底部側でドラムの動きを制限する部品を外す。

B1:ミラー制御ギア(ネジx1、部品下にワッシャー)、B2:ミラー制御鎌形金具(ネジx1、部品下にワッシャー)、B3:シンクロギア(eリング1。eリング下にワッシャー)を外す。B3が外しにくい場合はB8:シンクロ接点(ネジx2、右側は長いネジでスペーサーあり)を外せばよいだろう。

B4:先幕テンション調整ギア、B5:後幕テンション調整ギアにかかっている、B6、B7:ラチェットのバネのかかりを外しておく。ラチェットが動いてギアにかからないよう、テープで固定しておくとよい。

これで必要な部品を外した。幕の接着作業に入る。



巻上側ドラムのボディからの分離

なお、更に分解していくと巻上側ドラムはボディから分離できる。備忘録としておおまかに外し方を記録しておく。

底部の後幕軸の下端ギアを外す。貫通ネジx1。



丸印のネジと、矢印の位置にあったeリングを外す。eリングはスローシャフトを固定するためのもの。写真にはeリングがないが、これは飛ばして紛失したため。修理完了後に見つけたが、既にスペアを取り付けており、再度分解するのも面倒なのでそのままにした。



巻上軸の下からギアが出てくる。大きなネジで固定されている。

この状態でネジを回しても、ネジとギアが固定されているフィルム巻取軸ごと回ってしまい、外れない。2点の窪みがあるのでこれでギアを固定しても外せるが、もう少し簡単な方法がある。



一旦、逆空転ギアを取り付け、矢印の位置で逆転防止爪をかける。これでギアが回らずにネジだけ回せる。



フィルム巻取軸ギアを外す。



ネジx3を外して巻上軸台座を外す。



必要な部品を外し終わった。巻上側のドラムがプレートごと上に抜ける。矢印の軸を上に引っ張ると抜きやすい。



外したところ。これで巻上側は幕の接着が簡単になる。平行には十分気をつけること。後幕ドラムの上下位置は中央ではなく、少し上にずれていたので、幕をドラムの下端あたりに貼る必要があるようだ。



外したプレートの下からはセルフ関係の部品が出てくる。清掃と注油をしておく。右のフィルム巻取軸の上端も金属粉で汚れているので清掃、注油しておく。ここのように巻上のスプリングが入った箇所は多めにグリスを塗っておいたほうがいいだろう。



巻取側も外せないか探ってみたが、底側のテンション調整ギアの外し方が分からず、断念した。そのままでは外せないし、セットネジも見当たらない。ギアにも軸上端にもスリ割りがあるので逆ネジのネジ止めかと思ったが、回らなかった。


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