目次:
幕をドラムに接着する。ボディとドラムの間を通すため、リード紙をテープで貼り付ける。カレンダーの紙のような、ツルツルして丈夫なものがよい。紙はボールペンなどに巻きつけてカールさせておく。
ドラムと幕の関係は図のようになっている。図は左が巻上レバー側。上がフィルム側、下がレンズ側。
(1)先幕、(2)後幕、(3)先幕ドラム1、(4)先幕ドラム2、(5)後幕ドラム1、(6)後幕ローラー1、(7)後幕ローラー2、(8)後幕ドラム2。
ドラムに隠れて見えない(7)後幕ローラー2に注意。後幕はこのローラーの後ろ側を通っている。
後幕をドラムの裏に通す。巻取側のリボンはローラーの裏を通すのを忘れないように。
幕を接着する。幕全体が斜めにならないように注意する。オリジナルの幕は1cmほどの幅で接着されていたので、同じようにする。
巻取側のリボンはしっかり接着してしまってもいいが、写真の巻上側の幕は後で調整する場合があるので、仮止め程度にしておく。接着を先端だけにしたり、セロテープで貼るなど(両方試したが、接着ちょん付けより、セロテープの方が調整しやすかった)。
調整する場合に位置の基準が必要なので、ドラムを軸に固定しているネジの横にまっすぐ接着した。
ある程度接着が固まったら、後幕チャージギアとの位置関係を調整する。
底部で後幕ラチェットのバネをかけ、後幕軸ギアを回してテンションを軽くかける。幕が端から端まで走る程度。
巻上側ドラムを指で回して幕を巻き上げ、事前に "B" で確認していた後幕竿位置に合わせる。
注油しながら部品を取り付けていく。注油の知識がないが、とりあえず強くこすれるところにモリブデングリスを塗ることにする。面でこすれる場所で、弱いバネの力で動く必要があるところは、油で貼り付いてしまうので注油は避ける。
19:後幕チャージギアを22:後幕ストッパーの係止位置に取り付け、20:後幕軸ギアとリンクする。22は常に係止する方向に力がかかっているので、自動的に係止される。
しかしそのままだと22が写真下方向に行き過ぎるので、22を写真上方向に少し戻して、写真と同じ実際の係止状態に合わせる。
この状態と先程の後幕竿位置が合うなら問題ない。合わないならギアの歯を1つずつずらして調整する。ギアの歯1つ分ずらすと幕竿が行き過ぎてしまい、ちょうど良い位置に調整できない場合は、幕の接着位置を変更するしかない。
調整できたら巻上側の幕を本接着する。ドラムを巻上時とは逆に回して幕のゴム引き面を露出させ、接着剤を塗る。
18:先幕ストッパーを取り付ける。
先幕も後幕と同様に両方のドラムに接着する。巻上側のリボンは、先程と同じく後の調整のため、仮止めにしておく。ネジのすぐ横にリボンを接着した。
ある程度接着が固まったら、底部の先幕ラチェットのバネをかけ、先幕軸ギアを回してテンションを軽くかける。
後幕をチャージして係止した状態で、先幕竿を事前に "B" で確認していた位置に合わせる。大体でいい。
9:先幕チャージギアを取り付ける。ギアは記録していたおおよそのレリーズ位置にし、17:先幕軸ギアとリンクする。先幕もチャージしておいてギアをチャージ位置で取り付けてもいいが、それだと先幕チャージギアと後幕チャージギアのリンク部分同士がぶつかって取り付けにくい。
なお、9の取り付け時に22:後幕ストッパーを一時的に避ける必要があるので、後幕が走ってしまわないように巻上側後幕ドラムを押さえておくこと。
9を取り付けたら22の係止を外して後幕を走らせ、後幕チャージギアを9とリンクさせる。
次に9を矢印方向に回して両方の幕をチャージしていく。このとき両方の竿がほぼ重なっているはず。位置が違うなら一旦後幕をチャージして係止しておき、9と17とのリンクを、ギアの歯1つずつずらして調整する。
チャージ完了直前で竿同士は完全に重なった位置ではなく、写真のように後幕竿が先幕竿の左から0.5〜1mm程度見えている状態にする必要がある。
これはレリーズ時に先に走る先幕竿が後幕竿に引っかからないようにするため。引っかかると秒時にムラが出る。
ここでもギアの歯1つ分で行き過ぎてしまって調整できない場合は、先幕リボンの接着位置を変更するしかない。
21:レリーズシャフトを取り付ける。レリーズ伝達ピンもシャフトに取り付けておく。
21は後幕ストッパーの邪魔をするので、自動的に後幕チャージギアが係止されなくなる。21は円錐状に細くなっている部分があるので、21を押し込むと後幕ストッパー動いて係止できる。
動作チェックのため、仮に13:先幕制限を取り付ける。
21を押しながら9を回してチャージする。チャージしながら幕竿の位置関係が合っていることを確認する。
チャージ完了時、9と後幕チャージギアの両方がほぼ同時に係止されることを確認する。
18:先幕ストッパーを外して先幕を走らせ、21を放して後幕を走らせる。両幕が正常に走ることを確認する。
リボンがフレームにかかったりしないか、竿が不必要なタイミングでフレームに顔を出していないか、幕が最後まで走りきっているかチェックする。
チャージ関係のギアを取り付ける前に、底部のギアの状態を合わせておく。B9:底部巻上ギアの状態を合わせる。このギアは中央のネジで固定されているだけなので、この後に位置がずれてしまっても、ギアを外して再度合わせればいい。
B1:ミラー制御ギアとB2:ミラー制御鎌形金具を取り付ける。写真はレリーズ位置。
B1は特にチャージ位置でのB11との位置関係に注意する。チャージでB1bがB11を乗り越えた直後にチャージ完了となる。
B3:シンクロギアを取り付ける。B3aとB12の隙間に注意する。
レリーズ位置で16:逆空転ギア群を取り付ける。矢印の位置で下側のギア裏側の切り欠きに、ちょうど逆転防止爪が掛かる位置。上のギアは茶色いピンがはまる位置だが、ギアの歯1つ分の調整幅がある。ここでは写真の位置に取り付けた。
銀色のカバーも取り付ける。
レリーズプレートを取り付ける。逆空転ギア群が逆転防止爪を踏んでいないかチェックする。
チャージ関係のギアがリンクされたので、スプロケットを回せばチャージできるようになった。テストでチャージしてみて、レリーズプレートを押しながら先幕ストッパーを外してレリーズし、幕の動きを確認しておく。
レリーズプレートが押せないなら逆空転ギア群の位置が間違っている。
一旦、先幕制限を外し、14:チャージ伝達ギアを取り付ける。
再度、13:先幕制限を取り付ける。
先幕制限は丸印のネジ穴に調整幅があり、後ろ側、矢印のネジで調整できる。
チャージが完了した瞬間、つまり、先幕、後幕のストッパーがかかり、逆回転ギアが1回転してレリーズプレートが押せるようになる瞬間に、先幕チャージギアが先幕制限に当たるように調整する。
フィルム無しなら問題なくても、フィルムを入れるとここに問題が出る場合がある。フィルムのテンションで先幕チャージギアが左回り方向に引っ張られるため、巻き上げ時の力次第で先幕チャージギアが微妙に係止されない場合がある。この状態でシャッターを切ると、ミラーが上る前に先幕が走り出す。フィルムには真っ黒か、端しか露光していないフレームが現れる。
また、24枚撮りフィルムでは問題ないが、36枚撮りだと不具合が発生する場合がある。これはテンションの強さの差から起こる現象。この場合も先幕制限を調整する必要がある。
巻上ギアを取り付ける。位置が決まっているので、事前に確認した位置に。
ゼンマイ制限を取り付ける。
ゼンマイユニットを取り付ける。
ここで巻き上げレバーでチャージできるようになったので、仮付してテストする。
ゼンマイは固定されていないので、外れないように注意する。
後は分解時と逆順に組み立てていく。速度ダイヤル取り付けの際は、スロー伝達レバーを踏まないよう注意。
一気に最後まで組み立てず、ステップごとに動作確認をすること。
また、スロー、特に "1" で後幕竿がフレームに顔を出さないかを確認しておくこと。スローでは後幕が走り出す前に少しだけ後幕が進むので、チャージ位置で後幕竿がフレームに近すぎると、露光中に後幕竿がフレームにかかってしまう。
組み立てたら幕速の調整を行う。まずは高速域を調整する。
B4で先幕、B5で後幕の巻取側ドラムのテンションを調整できる。左に回すとテンションが強くなり、幕が速く走る。
B6、B7がラチェットになっているので、テンションを弱めるときはドライバーで調整ギアを押さえながらラチェットの爪を外し、調整ギアを右に回転させる。
両方の幕が同じ速さで走るよう、シャッターテスターでフレームの左右の端近くの2点で計測しながら調整する。幕速自体は、フラッシュの同調速度が1/30なので、幕竿がフレームの端から端まで到達する時間は1/30より早くなる。この個体では最終的に1/55くらいになった。
調整は非常に難しく、コツのようなものは今ひとつ分からない。とりあえず、後ろから見て左側、巻取側の計測点で、露光が右側より短い場合、後幕が先幕より速いということになるので、先幕のテンションを強めるか、後幕を弱めることになる。
そうやってなるべく両方の幕速を同じにしながら、更に両方の幕を速めたり強めたりして、設定速度と合うように調整する。
どちらの幕も、基本的にテンションを強めると全体のシャッター速度が速くなり、弱めると遅くなる。しかし先幕を強めると後幕との速度差が広がってシャッター速度が遅くなることもある。とにかく試行錯誤するしかない印象だ。
個体差があると思うが、自分の個体では "1/500" を合わせると、"1/250" は一致するが、"1/1000" は遅く、"1/125" 以下は速くなってしまう。すべての速度を合わせるのは無理のようだ。
また、計測のために連続的にシャッターを切っているときより、しばらく時間を開けてシャッターを切ったときのほうが速度が速くなる。これはドラムのバネが弱っているということなのかもしれない。実写で1/1000が開かなかったりする目も当てられないので、ここでは指定秒時より若干遅くなるように調整した。
なお、この個体の調整結果は、先幕は調整ギア4回転弱、後幕は6回転弱だった。
シャッターテスターがない場合は、超スロー動画撮影できるデジタルカメラで代用できると思われる(試してはいない)。幕が走る様子を撮影すれば、幕竿間の幅と走る速度からシャッター速度が計算できるはずだ。
おおまかなスロー秒時の調整は底部のネジで行う。丸印のスローガバナーがバナーを固定する2つのネジには調整幅があるので、その位置で大雑把にする。
ネジは写真右方向に動かすと秒時が速くなり、左に動かすと遅くなる。
スローの細かい調整はB14a:調整ネジとB13a固定ネジ(逆ネジ, LH)で行う。
B13aを緩めるとB13:スロー調整プレートが動かせるようになり、調整ネジB14aで角度を調整できる。
B13が動くと、B13に固定されたB11:スロー槍も動き、スロー秒時を調整できる。
B11が右に動くと遅く、左に動くと速くなる。
調整が終わったらB13aを締め込み、B14aを緩みどめで固定しておく。
スローも "1/15" に合わせるとそれ以下が速くなるようだ。使用頻度に合わせて調整するといいだろう。
今回は色々分解して調べているうちにスローシャフトとB14の位置関係が変わり(圧入?)、角度が浅くなってしまっていた。そのせいで "1/15" と "1/8" でスローがかからなくなった。B14aのネジ(M1.4x3)は既にいっぱいまで締め込まれていたので、やむを得ず長めのネジに交換して対応した。
スローを調整すると、"T" でそのまま後幕が走ってシャッターが切れてしまう場合がある。
原因は、スロー槍の下にあるB15:スローレバーが、"T" でB16:Tストッパーに引っかからなくなったせいだろう。正常な動作では、"T" ではB15aがB16aに係止される。
B16は丸印のネジに調整幅があり、位置を調整できる。"T" でギリギリB15aを係止できる位置に調整する。やりすぎると "1" でも係止されてしまうので注意。